月収1万7000円、妻子持ちのド底辺芸人(40歳)にさらなる追い討ちが――「嫁が子供を連れて出ていきました」
「芸人って、小器用になったよな」。今のテレビを観て、そう思う人は確かにいるだろう。しかし、それは仕方がない話。ひと言でいえば、“時代”。本来、「やらかしてナンボ」の芸人たちは、コンプライアンスという、テレビのルールと素人の監視下に置かれているからだ。かつて、談志師匠は「落語とは、業の肯定である」と。つまり、笑いの世界はクズとされる人間が口ひとつで肯定される世界なのである。
「クズ」……、この言葉で思い出す芸人が、ひとりいる。それは旧知の仲である、吉本所属のお笑いコンビ「ツーナッカン」の中本幸一。芸歴17年、40歳にして月収2万弱、あろうことか妻子持ち。しかしこの男、最高に面白いのである。現代のテレビのルールから大きく踏み外したこの男の魅力を、芸人連載の構成ライターを意外と長くやってたりもする私、村橋ゴローが電動ママチャリ(略して電マ)に乗って再発見しに行ってきた!
――ご無沙汰してます!
中本幸一(以下、中本):ゴローさんとは5年以上の付き合いで、何十回も飲んだことあるのに、仕事するのは初めてですもんね。宜しくお願いします!
――まずは皆様に、ご挨拶を。
中本:そうですね。
――お前のことなんて誰も知らないんだから。
中本:いきなり口、悪いな! ツーナッカンの中本幸一と申します。芸歴17年、40歳になります。
――今日は厳しい質問もどんどんしますので、飲みながらやりましょう。
中本:マジすか!? 天国やがな! じゃあ、生ください! で、今日の取材って、どんな内容なんですか? まあ、マトモな取材じゃないってことは薄々感じてますが……。
――そのー、中本さんって(まだシラフなため、さすがに「ド底辺芸人」とは言えず)まったく売れてないじゃないですか。しかも40歳。でも僕は、何度も一緒に飲んでるので中本さんの面白さは知っているんですよ。それが世間に届かないのが歯がゆい。ですからそんな中本さんの魅力を“再発見”していこうと。まあ、まだ世間にすら発見されてないんですけどね。
中本:ガハハハハ!
――笑ってる場合か!
中本:いやあ、酒が美味い! どーせ、アレだろ!? 自分より下のヤツの話を聞いて笑いたいだけだろ? 俺のライブにも、そういう客が来るんだよ!
――卑屈になるんじゃねーよ!
中本:でもアレだ、今日はゴローさんが俺の魅力を書いてくれるんだ。もう「こんな逸材が眠ってる」とか適当なことを書いといてくださいよ!
――クズだな、オイ! その素材をお前が提供するんだよ!
中本:面倒くせえなあ!
――じゃあ取材、始めますよ? 今日はお台場でお仕事されてたとか。
中本:そうです。朝からさっきまで。
――お台場というと、フジテレビで収録でしたか? それとも湾岸スタジオ?
中本:そのどっちとも縁がないわ! 知ってて、わざと言ってるだろ。違いますよ、台場で清掃のバイトだったんですよ。
――バイトですか……。それは週何回?
中本:もう毎日ですよ。昼・夕方・夜勤とやってるので、スケジュール上は月に37日働いてることになってますよ。
――うわぁ……芸人としての仕事は、どうなんですか?
中本:芸人としては月に3本です。テレビの前説が2本と、千原せいじさんが沼津でやられてるトークライブがあって、それのゲストに毎月。レギュラーはこの3つだけ。それ以外にイレギュラーで入ってくることなんて、滅多にないです。
――芸人としての稼ぎは?
中本:先月は1万7千円でした。
――今、おいくつでしたっけ?
中本:さっきも聞いたろ! 40だよ!
――同期でいうと誰がいます?
中本:キングコングにピース、ウーマンラッシュアワーに平成ノブシコブシ……。
――豪華なメンツですね。あと南海キャンディーズにノンスタイルもいますし、当たり年じゃないですか。
中本:俺以外はね。まあ、タメ口では話せないですよ。というか、キングコングには会ったことすらないわ!
――実在するのかもわかってない(笑)。
中本:『アメトーーク』で「キングコング同期芸人」って、やったじゃないですか? 僕らそのウラで『キングコングと会ったことない芸人』ってトークライブをやったんですけど、まあ不評でした。メンツはツーナッカン、バンジージャンプ、2トントラックにさかもとという。
――誰も知らない(笑)。
中本:でしょ?(笑) トーク内容は自慢話ばかりで「俺はNSC時代は、ピースより良かった」とか「作家さんには誉められてた」とか、まあ地獄でしたよ。
――ピースの又吉さんなんか、もう芸人の枠を超えてご活躍されてますもんね。
中本:あいつの本は、フツーに読みましたもん。もうお茶の間感覚ですよ。「綾部がニューヨークに? へ~」って。
――本当は今日、こんなカラオケボックスじゃなくて中本さんの家でお話し聞きたかったんですよ。そのほうが本音も話しやすいかなって。ちなみに中本さん、ご結婚は?
中本:してますよ。子どもも2人いますし。
――あ、それでご自宅での取材はNGだと……。
中本:違うよ! ゴロー、お前知ってて言うのやめろや! 嫁が出てっちゃったんだよ!
――まさか、第二子が生まれるタイミングで!?
中本:知ってんじゃねえか! 鬼か!
――お前がオイシクなる配慮だよ!
中本:じゃあ、いいよ! ありがとう!
――だからその、嫁と子どもがいなくなった空間での取材は嫌だったと?
中本:やっぱこうやって話すとテンション上がるじゃないですか? でも取材終わったら、みんな帰っちゃうでしょ? そのあとにひとりになりたくなああああい! 子どものオモチャとか目に入るしいいい!
電マライター・村橋ゴローの東京ぶらりんこ旅 【第13回】月収1万7000円、妻子持ちのド底辺芸人(40歳)が抱える葛藤「清掃バイトと掛け持ちでも芸人として成功したい」
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●『妊活イベント2017〜私たちらしく、妊活』
日時:5月28日(日)10:00〜17:00
場所:コクヨホール(東京都港区港南1丁目8番35号)
料金:無料
URL:http://nin-event.com/
※品川で行われる都内最大級の妊活イベントに村橋ゴローがパネラーとして登壇予定!
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