更新日:2017年11月15日 18:02
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安倍総理「9条改憲」をどう読み解くか。日本人だけが知らない戦時国際法とは?【評論家・江崎道朗】

【江崎道朗のネットブリーフィング 第12回】 トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!

サッカーの試合で、相手のエリアに入らずに勝てるのか?

江崎道朗

江崎道朗(撮影/山川修一)

 中学生のサッカー・チームが、日本代表チームに勝つことは可能か。  結論から言えば可能だ。日本代表チームに特別のルールを課せばいいのだ。例えば、日本代表チームの選手はキーパーも含め全員、足を縄で縛り、かつ相手のエリア内に入って攻めてはいけないとすればいい。そうすれば中学生のチームでも楽勝だろう。 「そんなのサッカーではない」という声が聞こえてきそうだ。そう、こんなのサッカーではない。ルールが敵味方に等しく適用されてこそ試合は成り立つ。  ところがこんな当たり前の理屈を理解しようとしないのが、日本のマスコミであり、政治家たちだ。何しろ「外国と同じルールで日本が勝負できるようになってはいけない」とマスコミも政治家たちも叫んでいるのだ。  なんの話かと言えば、日本国憲法9条と自衛隊のことだ。  実は日本人の大多数は、国際政治が世界共通のルールで動いていることを教えてもらっていない。世界共通のルールを知らないから、「日本がまともな独立国家ではない」ことを日本人だけが知らないのだ。  この世界共通のルールとは、戦時国際法という。 「日本を弱いままにしておきたい」人たちが絶対にその存在を知らせようとはしない、禁断の学問だ。  なぜ禁断なのか。お花畑しか教えてもらえなかった人たちにはショックかも知れないが、実は国際政治の共通のルール、つまり戦時国際法では、戦争そのものは「違法」でも「犯罪」でもない。戦争は悲惨な惨禍をもたらすが、それでも伝統的に「合法」とされてきた。  日本で改憲論議は1991年1月、米英仏を中心とする多国籍軍がイラク軍を攻撃した、いわゆる湾岸戦争を契機に本格化した。  この湾岸戦争のように、当事国間の交渉、第三者の斡旋・仲介、調停、仲裁裁判、司法裁判等の平和的手段によって紛争が解決できなければ戦争になることもあった。  そこで戦時国際法は「戦争を違法だ」として突き放さずに、「軍隊同士の戦争は合法」とし、戦争の勝者が平和条約を自国に有利な内容で締結することによって自国の意思を敗者に強制することを認めてきた。  ちなみに第一次世界大戦後、悲惨な戦争を阻止するため、欧米諸国は1928年、パリ不戦条約を結んだが、この条約で禁じられたのは「侵略戦争」であり、「自衛戦争」は引き続き合法とされた。
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日本人にとって禁断の学問「戦時国際法」とは?
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

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