ド田舎に家を建てて犬といっしょに暮らしているノートン――フミ斎藤のプロレス読本#027【ロード・ウォリアーズ編エピソード12】
アメリカと日本を往復する新しい生活がはじまった。片道15時間の空の旅と数週間のシリーズ興行。年に6回も7回も時差ボケをくり返すライフスタイルもラクではない。
日本でのツアーから帰ってくると、しばらくはなにもできない。かんじんのウエートレーニングだってなかなか手につかない。家にいて腑抜けのように寝てばかりいるほかない。
それでも、ホームタウンにいると野暮用ばかりできて、会わなくてもいい人と会って時間を浪費してしまったりする。いちばん居心地のいいところのはずなのに、なぜかいたずらに消耗していく。
家を買うだけのお金が貯まると、ノートンは迷わずオレゴンのはずれに、それもできるだけ喧騒から遠いところに新しいホームを建てることにした。これからの自分についてクリアにフォーカスするには雑音を遮断してしまうことだ。
人間嫌いになったのかというと、それもちがう。住めば都というとおり、オレゴンには新しい友だちがちゃんとワンセットいるし、重いバーベルを挙げるときにスポットしてくれる大男のトレーニング仲間もそれなりにいる。
じつはガールフレンドと呼んでもさしつかえない女友だちだってできた。ノートンはこれからの人生における生活の場としてオレゴンを選んだ。
たまにレスラー仲間が訪ねてくることもある。新日本プロレスのツアーで仲よくなったバンバン・ビガロが2、3日のオフを利用して釣りをしに来たりする。
リックとスコットのスタイナー兄弟がホテル代わりに泊まっていって家のなかを散らかしていったりする。みんな、ノートンが飼っている大きな犬と遊んでくれる。
それでも、夜になるとまたあの静けさがやって来る。“プシュッ”といい音をたてて缶ビールを開け、最初のひと口をぐいっとやると「やっぱり最後は独りなのかな」なんて思っちゃったりするのである。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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