よそいきホークとジョーンおばさまのトーキョー・ウォーク――フミ斎藤のプロレス読本#026【ロード・ウォリアーズ編エピソード11】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
1993年
「知り合いのおばさんに会うからいっしょに来てくれ」とホークがいうので、午前10時きっかりにKホテルのロビーに行くと、ジョーンおばさまと青い“外ナンバー”はもうすっかりしびれを切らせていた。
栗色の髪をショートカットにして、おとしのわりにはすらっと背の高いジョーンおばさまは、きょう1日のスケジュールをこまかくメモ用紙に書き出して、それをショーファーのミスター・ワカタベに渡していた。
ホークは、ブラックジーンズにおろしたての真っ赤なハーレーのTシャツを着てきた。足元はあいかわらず爬虫類系のブーツだけれど、大きなメタルのバックルがついた革のウェスタンベルトをしてこなかったのは賢明な判断だった。
頭に巻いているバンダナも無地のブラックだ。なんだか、きょうはひどく感じがいい。
ジョーンおばさまとホークは、ミネアポリスにある家をどうしようかいろいろ迷っている、というおしゃべりで盛り上がっていた。
「ぼくはいま独身ですから、大きな家を売って、ちいさなコンドミニアムに移ろうかと考えています」とホーク。
「家はそのままですが、犬だけはちゃんと連れてきましたわ」とジョーンおばさま。
ふたりともほんとうはミネソタに住んでいるけれど、ふだんはトーキョーで生活している。ホークがジョーンおばさまを知っているのは、ホークがジョーンおばさまの娘さんのエレノアさんと友だちだったかららしい。
ミスター・ワカタベのメモには(1)刀剣博物館(2)東急ハンズ(3)スパイラル・ホール(4)昼食、神田で“あんこう鍋”(5)交通博物館(6)大使館、と書かれていた。
ジョーンおばさまは、ご主人の転勤で1カ月まえにこっちに来たばかり。ガイドブックをすみからすみまで読んで、スキのない半日観光のスケジュールを立ててきた。
ホークは、とてもお行儀よくミネソタのおばさまのおはなしを聞いていた。汚いコトバはいちども使わなかったし、ジョーンおばさまもホークの話すことにやさしく、上品に耳を傾けていた。
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