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新橋キャバクラ店撲殺事件から考える。「性をウリにしない職業」なんてあるのか?【カリスマ男の娘・大島薫】

見た目は美女でも心は男――。「カリスマ男の娘」として人気を博し、過去には男性なのに女優としてAVデビューを果たした大島薫。女性の格好をしたまま暮らす“彼”だからこそ覗ける、世の中のヘンテコな部分とは?
大島薫

大島薫。画像は制作中の写真集より

 意図せずとも性は売り物になる。  ここ数日ツイッターなどを賑わせているニュース記事がある。  記事の内容は、7月に起こった東京都港区新橋のキャバクラ店での事件で、勤務中だった女性が、店の経営に関与していたとされる男性に顔を踏みつけられるなどの暴行を受け、亡くなったというものだ。  これに対してツイッターユーザーが疑問視したのは、キャバクラやスナック従業員の労働組合「キャバクラユニオン」へ寄せられる、今回の件への誹謗中傷だった。「高給の代償だ」「女性を売り物にすればリスクはつきもの」という言葉を受けたという代表者のコメントに、ツイッター上では「なんで被害者がバッシングされてるの? 女性を売りにすればリスクはつきもの、高給の代償なんてよく言えるよ。お前らは何を知ってんだよ」と憤るユーザーのツイートが共感を呼んでいる。  さて、よくよく事件を見てみると、この話は男性客に殴られたとかそういう話ではなく、働く男性従業員から暴力を受けた話なので、「女性を売り物にしたから起きたリスク」とは直接結びつかない。1番の問題はただたんに水商売の労働環境の劣悪さに終始する。  ボクは昔、まだ男性の見た目だったころ夜の仕事を何件か経験したことがある。バーテンダーや、黒服など形は違えどどれも水商売だった。たしかに暴力沙汰は日常茶飯事だ。なんならむしろ男ばかりのホスト業界のほうが、鉄拳制裁をよく見かける。ボクもご多分に漏れず、バーテンダー時代に当時の店長から顔面をぶん殴られたことがあった。  なので、「女性を売り物にすればリスクはつきもの」という言葉が、今回の件についてなのか、キャバクラユニオンに日ごろから寄せられる中傷なのかは記事中からは読み取れないが、ふと思う。 「果たして性を売り物にしない職業なんてあるのだろうか?」と。

水商売じゃなくOLだって「女性だから」

 例えば、ボクは男性でありながら、女優としてAV業界にいた。いわゆる「女性」という性を売り物にする職業といえば、AV女優はわかりやすく女性を売りにしているといえるだろう。その他、風俗嬢、キャバ嬢、ホステス……これもわかりやすい。  では、アイドルや、女性モデルはどうなのか。これも正直なところ「女性」であることを売りにしているという点では、女性を売り物にする職業といえる。もちろん歌唱力や技術を要求される点で、水商売や性風俗従事者と同じとすることに疑問を抱く人もいるだろうが、それは夜のシゴトも同じだ。女性を売りにするところからスタートし、技術や能力で差が出る。  では、OLなんかはどうだろうか? これはもう一般的な職業で、女性云々関係ない職業のような気がする。いやいや、しかし、いまだに来客へのお茶出しはなぜか女性社員がさせられたり、受付は必ず女性を置くという会社は多い。なぜだろうか? それは女性であるからだ。これだって結局女性を売り物にしているといえる。女性本人が女性を売る気がなくとも、社会がそういうものとして女性を捉えているのだ。  女性に接客されたほうが気分がいいだろうから、という気持ちで採用された仕事は全部女性性ありきでの雇用だし、自分にその気がなくとも「かわいい女の子だから」という理由で仕事をもらうようなことがあったら、結局女性を売り物にしてることになる。  労働力の買い手においてまだまだ男性の割合が多いこの社会で、女性を売り物にしない職業なんてない。  では、つまるところ、なにが言いたいかというと、「女性を売り物にしている職業がリスク」なのではない、「女性であることがリスク」なのだ。  我々男性はその事実に気づきにくい。だからこそ、水商売や風俗の女性に対して、ことさらに女性を売りにしているように見えがちだ。
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先日、見知らぬ男から急に仕事のオファーが来た話
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