更新日:2022年10月05日 23:36
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「洞穴に籠もることしか興味がない」佐山サトルが求める“核心”とは【最強レスラー数珠つなぎvol.13】

――この連載では、「強さとはなにか」を探っています。佐山先生が思う強さとは、なんですか。 佐山:反対に、弱さとはなんだと思いますか? ――なんでしょうか……。 佐山:一つには、不安心です。自律神経には交感神経と副交感神経というものがあって、交感神経が上がると精神のバランスが崩れるわけですね。恋愛問題、お金の問題、仕事の問題で崩れることもありますし。いま、いきなりライオンが現われたらびっくりしますよね。それも全部、崩れる要因なんです。これが弱さである、と。  この弱さを強さに変えていくために、交感神経を下げればいいかというと、それはできないんです。副交感神経を上げていかなければいけないんですね。心理学者というのは、神経言語学とか、あるいは催眠とかで副交感神経を上げます。つまり、弱さを治してしまうんですね。それも強さの原点になると思います。ただ、心理学者は弱さを改善することはできるけども、強さを作ることはできない。それを作るのが、僕らの仕事だということです。 ――大変興味深いです。 佐山:脳波には、アルファ波とベーター波などがあります。アルファ波の中に「7.5~13.5」という数字があって、その上にベーター波の「13.5~30」という数字があるんですね。いま、あなたが熱心に僕の話を聞いてくれている姿は、ベーター波の中にあるんです。ベーター波の18くらいだと思いますけども。でも本当に集中力を養えるのは、アルファ波の中の“ミッドアルファ波”という「9~11」の世界。その世界の中で集中波を出していくと、本当の集中力が現われるわけです。  ベーター波の上のほうの状態になると、ガンマ波というのがあるんですけども、そこまでいくと自律神経を崩してしまいます。フィルターを使って、その状態においても「9~11」の世界を保つことによって、集中力が湧くんですね。そうすると、体だけではなくて、精神的にも強さが現われるわけです。その状態でいかにフィルターを作るかが、一番大切だということですね。 ――「核心をつく」ということを、18歳のときにも意識していましたか。 佐山:していませんでした。当時は格闘技をやりたかっただけです。 ――いつ頃から意識し始めましたか? 佐山:修斗を創始し、構築している途中からですね。なぜ練習で強くても、試合になると弱い選手がいるのか。その辺りから始まりました。オリンピックにしても、練習では強いのに、試合では力を発揮できない選手がいっぱいいますよね。日本人に多いんですけども、なぜそういう文化なのかということも大切ですし、なぜ日本文化が優れているのかというのも研究の一つです。 ――この連載では、最後に次の“最強レスラー”を指名してもらっています。ですが、プロレスラーに限らず、佐山先生が本当に強いと思う人を教えていただきたいです。 佐山:だれでしょうね。……あ、藤原敏男がいた。キックボクシングの藤原敏男が一番強いです。ムエタイのラジャダムナンルンピニーに勝ったというのは、ものすごく強いと思います。黒崎(健時)先生に叩き込まれたので、精神面でも強いと思いますよ。すごくいい人間ですし、立派な方だなと思うはずです。 ――ありがとうございました。お会いできて、本当に光栄でした。  佐山サトルは、プロレスラーを指名しなかった。私がそれでもいい、と言ったからだ。「最強レスラーが、最強レスラーを指名する」という自分が決めたルールを、私は自ら破ってしまった。それは私が初めて心から、「強さとはなにか」を知りたいと思った瞬間だった。  佐山サトルは天才だ。ゆえに、だれからも理解されない。人は、人から理解されないと、どんな気持ちがするのだろう。悲しいのだろうか。誇らしいのだろうか。孤独なのだろうか。佐山サトルはずっと、孤独の中に生きているのだろうか。かつて初代タイガーマスクとして一世を風靡した青年は、60歳を目前にして、「洞穴に籠もりたい」と話す。  佐山女子会は、永遠に続けよう――。穏やかな笑顔の中に見え隠れする、“佐山さん”の寂しげな瞳を見つめながら、私はただ、そう心に決めた。 【PROFILE】佐山サトル(さやま・さとる) 本名・佐山聡。’57年11月27日、山口県下関市生まれ。’75年に新日本プロレスに入門。メキシコ、イギリス武者修行を経て、’81年4月、タイガーマスクとして衝撃のデビュー。日本中にタイガーマスクブームを巻き起こす。旧UWFで復帰し、その後、総合格闘技「修斗」を立ち上げる。‘99年、新たな武道「掣圏真陰流」を創始し、精神修養のためのセミナーなどを開催。2005年6月、“ストロングスタイルの復興”を掲げ、リアルジャパンプロレスを設立。代表を務める傍ら、日本武道の原点を継承した精神武道「須麻比」を創設し、一般社団法人日本須麻比協会会長に就任。 <取材・文/尾崎ムギ子(@ozaki_mugiko) 撮影/安井信介>
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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■初代タイガーマスク 佐山サトルプロデュース
リアルジャパンプロレス 初代タイガーマスク黄金伝説2017
『LEGEND OF THE GOLD Ⅷ』

http://seikenshinkageryu.la.coocan.jp/

【開催日】2017年9月14日(木)
【開場時間】17時30分
【開始時間】18時30分
【会場】後楽園ホール

【対戦カード】
<メインイベント レジェンド選手権試合 シングルマッチ 60分1本勝負>
[第12代王者]船木誠勝(第12代王者/フリー)VS[挑戦者]スーパー・タイガー(リアルジャパンプロレス)

<第5試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
“大鵬三世”納谷幸男(デビュー戦/リアルジャパンプロレス)VS 雷神矢口(邪道軍)

※チケット:e+(イープラス)http://eplus.jp/tiger/(PC&携帯)
ファミリーマート店内Famiポート

■佐山女子会Twitter:@sayama_joshi
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