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「洞穴に籠もることしか興味がない」佐山サトルが求める“核心”とは【最強レスラー数珠つなぎvol.13】

「最強レスラー数珠つなぎ」――毎回のインタビューの最後に、自分以外で最強だと思うレスラーを指名してもらい、次はそのレスラーにインタビューをする。プロレスとはなにか。強さとはなにか。この連載を通して探っていきたい。

 8月某日。都内のカラオケボックスに、マイクを持たず、画面を一心に見つめる女性たちの姿があった。時折、「キャー!」という黄色い声をあげる。画面に映るのは、初代タイガーマスク。青のコスチュームと黄色いマントを身にまとい、ステージの真ん中でエルヴィス・プレスリーの「Can’t Help Falling in Love」を歌う。女性たちはその美声に聴き入り、「佐山さんに乾杯!」とグラスを合わせる。レモンサワーは、甘酸っぱい恋の味だ。

 今年2月、私は「佐山女子会」を結成した。きっかけは、『1984年のUWF』(柳澤健著/文藝春秋)。プロレスに憧れ、失望し、それでも新格闘技という道を切り拓こうとする佐山青年は、儚さを帯びたヒーローそのものだった。ああ、佐山さんのすべてが好きだ! 闘いも、見た目も、思想も、歌が上手なところもすべて!

 当時の私は、どん底だった。仕事がない。貯金は底をついた。このままでは飢え死にしてしまう……。佐山さんだけが、心の支えだった。頑張って生きていこう。生きていれば、いつか佐山さんに会えるかもしれない。それだけを夢見ていた。

 夢は突然、叶うことになった。この連載でノアの中嶋勝彦選手が、“最強レスラー”として佐山サトルの名前を挙げたのだ。「へえ、佐山さんですか。意外ですね」と平静を装いながら、私の体は小刻みに震えていた。オフィスを後にした瞬間、涙が頬を伝った。

 こうして私は、憧れの佐山さん、否、「佐山先生」(プロレス界ではそう呼ぶ)に会いに行くことになった。

【vol.13 佐山サトル】

――佐山女子会という会合をやらせていただいております。

佐山サトル(以下、佐山):そうですか。佐山女子会……なんでしょうね、それは。

――佐山先生のことが大好きな女子の会です。

佐山:そんな人いるんですか。そうですか、ありがたいですね。これからも永遠に続くようにやってくださいね。よろしくお願いします。

――私は佐山女子会の会長として、佐山先生の歴史や思想を発信していきたいと考えています。

佐山:なるほど、なるほど。これはプロレスの連載ですよね? ただ、僕の本心というのは、べつのところにあるんですね。だれも僕の本心を知らないんですよ。今日のテーマに合っているか分からないんですけど、僕は一部のプロレスに呆れている。もっと言えば、一部の格闘技にも呆れているわけですね。僕が継承しているストロングスタイルというものがあって、それを推し進めることだけが僕の本心だと思っている人がいるんですけど、そうではありません。

 30年前、修斗を作りましたけども、天覧試合をやりたいとか、相撲のようなものを作りたいとか、精神的なものと共にあるものを作りたかったんですね。それでタイガーマスクを辞めて格闘技の世界に入ったわけですが、若気の至りって言うんですかね。哲学も科学もなにも知らなかったものですから、実現できなかったんです。でも、いまならできるんですよ。そういうことばっかりが、僕の本心なんです。科学的なものとか、本当の強さとはなにか、とかね。いま、その最終段階にいるわけです。

――新たなる格闘技を作ろうとしているのでしょうか?

佐山:格闘技ではないですね。格闘技の精神的なものですね。仏教であったり、儒教であったり、儒教の中にある朱子学であったり、陽明学であったり。グローバル主義の中に流れているものも取り入れなくてはならないし、神道的な普遍的無意識もそうですよね。歴史も大切ですし、精神学も大切ですし、それらを全部まとめなきゃいけないわけです。なにがしたいかと言うと、祠(ほこら)とか、洞穴に籠もりたいんですよ。集中したいんですね。いまやっていることはすべて人に任せて、核心の部分を求めたいんです。

――核心の部分とは?

⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1392344

佐山:例えば、昔の侍は深夜に刀を振って、2時頃になると変遷意識が現われて感覚が鋭くなっていく、というのがあるんですけども。そういうことをしなくても、感覚が鋭くなるというのを僕は把握しているわけです。なんかヘンなことを言ってるみたいですけども、そこを突き詰めていきたい。これがいまの心境なんです。真の武道を作りたいということですね。

――いまの心境に至るまでの、佐山先生の歴史をお伺いしてもよいでしょうか。

佐山:もちろんです。

――18歳のとき新日本プロレスに入団して、憧れのプロレスラーになったにも関わらず、新格闘技を作ろうとされました。その理由はなんですか。

佐山:新日本プロレスでは、プロレスの練習は一切、やらないんですよ。でも、「ガチンコ」というトレーニング方法があって、セメントとも言いますけども、何人かだけが集まって、関節技の練習をするんです。僕は関節技に夢中になりましてね。「俺たちは世界一強い」と思っていました。藤原喜明なんかと、「俺たちって、世界の中でも5本の指に入るよな」みたいな話をしていましたよ。そのくらい、自信を持ってたんですね。

――関節技のどんなところが面白かったんでしょうか。

佐山:科学的なところでしょうね。例えば腕を極めるにしても、一つ一つの技を科学的に考えていく。それがスパーリングで培われていくんですね。

――新格闘技を作ろうと思ったのはなぜですか。

佐山:やっぱり、故郷から出てきた以上ね、簡単には帰れませんから。だったら、本物の格闘技を自分で作っちゃえばいいんじゃないかと思ったんです。本物の格闘技とは、打・投・極。つまり、「打撃に始まり、組み、投げ、そして最後に関節技で極める」ということを、色紙に書いて自分の部屋に貼りました。それがいまで言う、総合格闘技になったわけですね。

――無知で恐縮なのですが、普通の格闘技は、“打・投・極”という順番ではないのでしょうか?

佐山:ええ、順番は狂っても大丈夫ですね。最初からタックルにいく場合もありますし、打撃をかいくぐっていく場合もあるし、大体、それを防いでまた打撃に戻っていきますし。それはバランスが崩れてもいいと思いますね。

――なぜ佐山先生は、“打・投・極”という順番にしたんですか?

佐山:練習するための流れでもあり、宣伝のためでもありました。当時、世間は格闘技というものがまったく分からない状態でしたから。

――新格闘技を作るのではなく、既存の格闘技の選手になろうとは思いませんでしたか。

佐山:思いましたよ。まずは、猪木さんのところに行きました。シューティング・グローブを持っていって、「これを使ってください。新日本プロレスでそういう格闘技をやりませんか?」と。それはいい考えだ、ということになって、「お前を第一号の選手にする」と言われたんです。でも先輩もいるので、内緒にしてたんですね。僕だけ特別扱いになってしまうから。僕だけが選手になるんだと思って、練習していました。

佐山サトル

提供:佐山サトル

 それが突然、メキシコへ行けと言われて、その後イギリスに行きましたけども、そのときはまだ、「日本に帰ったら格闘技をやるんだな」と思っていました。23歳のとき、タイガーマスクとして帰ってきたわけですが、そのときも「いずれ格闘技をやるんだな」と思っていました。でも爆発的な人気が出てきて、猪木さんもその話はまったくしなくなるし、社会的風潮としても、これはもう無理なんだろうなと思ったんです。

――ならば、自分で新しい格闘技を作ってしまおうと?

佐山:その通りです。ただ、分かってもらいたいのは、当時、対戦相手がいなかったんです。ブラジルの格闘技なんかは知っていましたけど、どういう選手がいるかまったく分かりません。だったら自分が作ってやろうということで、当時26歳くらいですか。僕が50歳になったときに、それが実現すればいいなと思って選手を育てました。30年先を見てたんですね。

佐山サトル

提供:佐山サトル

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その後、新日本プロレスを退団

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■初代タイガーマスク 佐山サトルプロデュース
リアルジャパンプロレス 初代タイガーマスク黄金伝説2017
『LEGEND OF THE GOLD Ⅷ』

http://seikenshinkageryu.la.coocan.jp/

【開催日】2017年9月14日(木)
【開場時間】17時30分
【開始時間】18時30分
【会場】後楽園ホール

【対戦カード】
<メインイベント レジェンド選手権試合 シングルマッチ 60分1本勝負>
[第12代王者]船木誠勝(第12代王者/フリー)VS[挑戦者]スーパー・タイガー(リアルジャパンプロレス)

<第5試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
“大鵬三世”納谷幸男(デビュー戦/リアルジャパンプロレス)VS 雷神矢口(邪道軍)

※チケット:e+(イープラス)http://eplus.jp/tiger/(PC&携帯)
ファミリーマート店内Famiポート

■佐山女子会Twitter:@sayama_joshi





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