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高級マットレスにしたら寝られなくなった…寝具を買うときに絶対必要な予備知識とは?【元ふとん屋が教えます】

 はじめまして、「寝具の情報・ニュースまとめブログ」管理人の大野といいます。これから日刊SPA!で寝具や睡眠についての記事を書いていきます。
寝具

※写真はイメージです

 まずは最初なので簡単に自己紹介すると、私は都内で十数年間、寝具店を経営してきました。小さい店なりに販売・仕入れ・企画・宣伝など業務は多岐に渡り慌しい日々でしたが、そのおかげで、普通の人では絶対に知りえない「寝具業界のイロハ」にたくさん触れてきたわけです。  そして、そこで痛感したのは、あまりにも寝具業界側と消費者側との間に「情報格差」が広がっているという現実です。  実際に、皆さんは自分の布団やベッドを買ったときどんな状況でしたか?「なんとなく、店員に『コレがいい』と薦められたものを買った」「少し寝転がったら感触が気持ちよくて買った」という人がほとんどでしょう。  ハッキリ言って、それは失敗のもと。マットレスなどは高級な商品であり、しかも長く使い続けるのに、予備知識もなく買っている人があまりにも多いのです。そしてそれは、長く寝続けるなかで深刻な体のトラブルを招くこともあります。  私は現在、寝具に関する情報をブログで発信する傍ら、寝具コンシェルジュ的な仕事にも携わっています。それらの経験から、これからの記事では、消費者と寝具業界の間に横たわる「情報格差」を、少しでも埋めていきたいと思っています。  そこで今回はまず、私が出会った事例から「多くの人がハマるマットレス選びの失敗パターン」をお伝えします。

相談ケース「買ったマットレスが堅すぎて寝られなくなった」

 ある日、お客さんに相談されました。 「購入したマットレスが痛くて眠れない。到着から10日、すでにガマンの限界なので改善したいです」  選んだときには多少の不安はあれども、とても気に入っていたそうです。到着を楽しみに待ち侘びて、設置した日は少し早めにベッドに入りました。  ところが……。 「届いて何日かして『どうして?』と思いました。一度は眠れるんですけど、すぐに起きてしまうんです。そして何度かそれを繰り返して朝を迎えると、肩も腰も痛い。それが日ごとにヒドくなっていく。以前はこんなことはなかったのに」  そんな状況に陥ってしまったそうです。  これはつまり、「店頭で見て試して感じたことと、実際に使用してみた感覚」が、まったく異なっていた、というわけです。  仕様書を見せてもらうと、そのマットレスの名前は「ウルトラハードDX(仮名)」。  妥協のない“突き抜けた硬さ”が売りのマットレスで、私の感覚でいうと「170cm105kgで腰まわりが特にふくよかな男性ならどうにかいけるかな?」という代物です。  ところが相談者は「160cm強で50kg台」の女性。これでは硬すぎて身体がまいってしまうのも当然なんです。よほどマニアックな睡眠嗜好がなければ本来は選択する品ではありません。「このご体格の方によく販売したな……」というのが正直な感想でした。  さて、ここで本題です。  なぜ相談者の方は明らかに合わないと思われるマットレスを購入してしまったのか?ヒアリングしてみると、理由はいくつかありました。  第一に、相談者は購入を慌てていた。引越しの日時が迫っているのに休みはその日しかなかった。  第二に、相談者は疲労していた。その日は午前中から販売店を巡り、購入を決めたのは最後の4軒目、すでに夕暮れどきであった。  第三に、硬いマットレスは当時の主流だった。多くの媒体でハードの効用が取り上げられており、疑問を感じ難かった。  私としては、もうここまでで十分に失敗の要件は揃っていたと思います。  絶対今日中に買わなければならないと追い詰められて、寝具販売店の無理なハシゴをやってしまうと、疲労感から最後に立ち寄った店でなかば投げ遣りに買ってしまいがちです。本当は4軒目までで得た情報を整理して必要ならもう一度巡回すべきなのですが、一日に慣れない寝具店を何軒も廻ると、もう一度前の店に戻ろうと気力を奮うのはとても困難です。  しかも、くたびれているときに試すと、大抵のマットレスはより気持ちよく感じられてしまうので評価も甘くなりがちです。  また、商品の流行も、実際には業界側の販売戦略で、消費者の都合に合わせたものではありません。「3年前と3年後でメーカーの言っていることが真逆」なんてことも特に珍しくはなかったりします。いろいろな媒体で「いい商品だ」と言われていても、それが本当に睡眠にいいとは限らないんです。
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寝具選びでは「新鮮さ」に注意すべき
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