プノンペンで寸借詐欺をして生き延びた男の末路~日本を棄てた日本人~
当時仕事もなくヒマ人だった私は、店を畳んで姿を消したK満を足で探索。街角で見つけるたび呼び止めて説教しながら、1ドルでも50セントでも、所持金の5分の1程度を容赦なく取り立てた。
喰うのがやっとだの、死にそうだの言っても、カネが入れば女と酒に注ぎ込み、踏み倒す前提で“寸借詐欺”を重ね、それでいて「スポンサーがいれば居酒屋をやりたいんです」などと寝言を吐く。私の目から見て、もはやコイツに同情の余地は無かった。
このようにして、半年間で50ドル強を徴収。不謹慎だがまさにゲーム感覚。残る250ドルをどのように回収するか、密かに計画を練っていたある日、K満が本当のホントに失踪した。
狭いプノンペン。私が見つけずとも誰かが見つけて話題になるところ、実に3年あまり、目撃報告は皆無。寸借詐欺師として有名になった彼に、わざわざカネを貸す日本人もおらず、いつからか死亡説がささやかれ、熱心なK満フリークの私すら、それを信じていた。ところがだ……。
奴の存在自体を忘れていたある日、フェイスブックのタイムラインに突如現れた「あの顔」。
尋ね人写真のK満は若干日に焼けていたが、ホームレスとは思えない肌艶で、風貌は3年前とほとんど変わらない。それでいて、7年前に奴から初めてもらった顔写真付きネームカードと全く同じ服を着ていたのが、リアルといえばリアル。
シックスサマナ』発行人。同名のポッドキャストも放送中。
名乗りを上げ、残金250ドルを取り立てようか一瞬迷ったが、死人に鞭打つ行為もどうかと生暖かく見守っていたところ、篤志家の在住日本人から寝床と食事を与えられ、大使館の手配で(ビザもパスポートも無かったらしい)日本に帰国できることになったという。
果たして、日本帰国が彼にとってのハッピーエンドとなるのか。それとも、ややこしい第二章の始まりとなるのか……。前者であることを祈りつつ、皆さんも女と酒はほどほどに。<取材・文/クーロン黒沢>
【クーロン黒沢】
東京生まれ。90年代からアジア(香港・タイ・カンボジアなど)、洋ゲー、電話、サバイバル、エネマグラ等、ノンジャンルで執筆。強盗・空き巣被害それぞれ一回、火事・交通事故(轢き逃げされた)各一回、その他、様々なトラブルを経験した危機管理のプロ。現在は人生再インストールマガジン『1
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