カンボジアのスラム在住、便器の上で魚をおろす暗黒の包丁人~日本を棄てた日本人~
「本因坊はん、うちでメシ食わへん? うまいもん作ったるから」
カンボジア・プノンペン在住で筆者の友人、本因坊(仮名)。
ローカル・リサイクル業者から大量の古紙を仕入れ、屑紙の山からアメリカ大使館が廃棄したホテルの領収証などを拾い上げ、分別・収集するのが趣味……という立派な変人だが、今回の『日本を棄てた日本人』の主役は彼ではなく、そんな彼を食事に誘ったSという男である。
日本社会に収まらない。暗く重たい十字架を背負った関西出身のS(34)は、プノンペンに住みだして早10年目。かつては日本の飲食店で包丁を握っていたが、現在は某旅行会社の現地ガイドとして働いている。だが、某有名女優がプノンペンを訪れた際、忘れ物チェックの名目でチェックアウト直後の部屋に入り込み、タオルやら布団の臭いを嗅ぎまくったというマニアである。
生まれ育った尼崎では、虫や蜘蛛の巣だらけの側溝に一日中隠れ潜み、行き交う女性の股の間を下から盗み見るのが日課だった。
つい何年か前、側溝から女性の下着を盗撮した男が同じ県で逮捕され、ネットでド変態扱いされていたが、順番で言えばSのほうがぜんぜん先輩だったりもする。
冷戦時代なら、特殊部隊や情報機関からスカウトされてもおかしくない、特殊な潜行能力を持つS。しかし彼は今もなお、カンボジアのスラム街でくすぶっている。
「僕、いつもローカル食堂でひとり飯なんで、調理師だったSさんの手料理、興味あるんですよ……」
そう語る本因坊のもとに「良い魚が手に入った」とSから知らせが入った。貧民街の細い路地を何度も何度も曲がり、賭けトランプに興じる老人の集団を飛び越えた先の、じめじめしたモルタルの平屋がSの家だ。
本因坊を迎えたSは、さっそく市場で買ってきた鮮魚を披露した。鯛によく似た正体不明の魚。「刺身にするとうまい」と言うが、白く濁った目玉が不気味だった。
「ほな、いくで」
いきなりズボンを脱ぎ、パンツ一丁になったSが、まな板を抱えトイレへ入った。
カンボジアのスラム在住・便器の上で魚をおろす暗黒の包丁人~日本を棄てた日本人~
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