東京の屋台が風前の灯火…。壊滅状態に追い込まれた知られざる事情
こうした屋台を取り巻く環境に「社会が寛容性を喪失しつつある」と嘆くのが、望月氏である。
「屋台はその開放的な特性から、人と人をつなぐ役割がありました。転じて『街の歴史のアーカイブ』や『詩や小説といった文化の萌芽』『小さな社会コミュニティの形成』といった機能がありました。それは屋台がグレーゾーンでありつつも、存在が社会常識の範囲内に認められていたからにほかなりません。しかし、成熟した社会ではこのグレーゾーンが扱いづらい。そこで行政は景観や衛生面の観点から屋台を排除する方向に舵を切ったのです。規制でがんじがらめになった屋台は今後も衰退していくでしょう。でも街に長年寄り添ってきた屋台や裏路地には、その街の魂が宿っています。“時代の残滓”だと切り捨てるのではなく、いかに磨き直して街に溶け込ませるか。それが22世紀に向けた未来型の街づくりではないでしょうか」
一方で、現代における新しい屋台の形として急速に普及が進んでいるのが、“ネオ屋台”とも呼ばれるキッチンカーによる移動販売だ。オフィス街や公園の“屋台村”の仕掛け人・ワークストア・トウキョウドゥの烏川清治社長は、キッチンカーの将来性を熱弁する。
「オフィスビル建設でテナント企業を募集する際、どのデベロッパーにとっても重要な課題がランチ問題です。キッチンカーがお昼時に訪れることで課題を解決できます。オフィスの敷地内なら私有地なので道交法もクリア。最近では大学のキャンパスや老人ホームなど、需要は急速に高まっています」
平山氏は、自動車を改装することによる柔軟性を強調する。
「キッチンカーは東日本大震災発生時に既存の飲食店が壊滅的状況に陥った中、一躍注目を浴びました。五輪に向けたテロ対策で、ガスの使用が厳しく制限されてきていますが、キッチンカーは電気で対応できます。柔軟性ゆえに文化的に根付く可能性も高いですね」
東京五輪を境に、屋台文化は大きな転換を迎えるのかもしれない。
【望月照彦氏】
多摩大学名誉教授。構想博物館館長。都市・地域社会の民俗学・人類学研究を通して、新たな社会・共同体の在り方の研究を行う。童話創作活動やエッセイストとしても活躍
【大崎裕史氏】
ラーメン評論家。東京ラーメンショー実行委員長。ラーメンデータバンク会長。ラーメン文化史に精通する。著書に『日本ラーメン秘史』(日経プレミアシリーズ)など
【平山晋氏】
移動販売キッチンカーの専門コンサルタント。キッチンカーズライフ・アイドゥ代表としてセミナー経験も豊富。ライフモデルの一端としての移動販売を提唱している
― 消えゆく[東京の屋台]の今 ―
―[消えゆく[東京の屋台]の今]―
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