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日本のストライキはプロレスみたいなもの、海外はガチ…JR東日本のストはどうなるか

 厚生労働省はJR東日本の最大の労働組合である東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)から「ストライキに踏み切る可能性がある」との通知があったと発表した。これが成立すれば実に1987年の民営化以来初のストとなる。実際にストが起こったらどうなるか。暮らしにも影響は出るのだろうか。  そんな私たちの心配をよそに、今度は労組側から「ストをしても運行に支障なし」との続報が出た。あれれと拍子抜けした人も多いのではないだろうか。  1985年の旧国鉄時代は総武線浅草橋駅で過激派に寄る大規模なゲリラ暴動が起きたこともあるが、さすがに今の時代にここまで大きな暴動は起きないだろう。  いったい、ストライキとは何なのか。ストライキが起きると何が起きるのか。今では希少な存在となっているストライキ経験者、さらにはフランスでストライキを経験したことのある日本人の言葉をもとに解説しよう。

「時間を決めて2~3時間サボる」「プロレスみたいなもの」

 ストライキは労働者に認められた権利である。2004年9月の日本プロ野球選手会によるストライキも記憶に新しいが、日本でも1970年代には頻繁に見られた光景であった。しかし、現在では組合と経営陣との合意を目的とした制度化が定着し、あまり見かけなくなった。そんななか、実際に数年前に出版社でストを経験した40代男性社員はこう語る。 「時間を決めて2~3時間サボる。団交して決裂したら、また2~3時間サボる。出版社、特に編集者は仕事が個人に帰属しているから、そのツケは自分にくるんです」(40代男性・出版社勤務)  あまりやる意味はないと感じつつも、ポーズとして大事だと先輩から教わったという。 「要求拒否されたから一応やっておくかってね。ストするときって団交を何回かやったあとなんですよ。ゼロ回答が続いて『次もゼロだったらスト(ライキ)権使うぞ』みたいな確認が事前に組合内であるんです。そうすると経営陣も本当にちょっとだけ有額回答だしてくれるんですよ。お互いが妥結するための儀式みたいに感じましたね。経営陣はほとんど元組合員なので、プロレスみたいなもんです」(前同)

「労働組合は経営者以上に経営者目線」

 実際、役員などの経営陣には、元組合幹部という経歴を持つものが多いという。日本を代表する元国営企業では毎年のように“プロレス”が行われている。 「労働組合は経営者以上に経営者目線です。正社員雇用という既得権を死守するためですね。組合のトップがのちに労務担当役員になったり、出世街道にもなっています」(40代男性社員・元国営インフラ企業勤務)  毎年2月に行われる春闘は組合員のガス抜きのためであり、組合役員が経営者に変わって妥結までのシナリオを書き、押したり引いたりの死闘を演じるイベントなのだ。プロレスの“観客(組合員)”もそれをわかっているという。 「たまに“時間限定スト”みたいな観客参加型のイベントも待っているので、それに付き合いながら仕事に影響が出ないように、展開を読みながら働く感じですね」  全面ストで売り上げが減って困るのは組合員も経営陣も同じ。みんなが困らない範囲で、見せ場と落とし所を作るのが組合の腕の見せ所なのだ。
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ストライキのせいで病院で診てもらえない!
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