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スティング “真実の瞬間”を探して――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第76話>

 WCWで過ごした長い時間は、スティングにとって“内なる声との対話”のくり返しだった。プロレスっていったいなんだろう。勝つこと、負けることの意味ってなんだろう。いつもそんなことばかり考えていた。  友だちが幸せになる瞬間を共通できるときもあったけれど、不幸になるところを目撃してしまったこともあった。新しい登場人物が現れては、また消えていった。  メジャー団体WCWはレスリング・ビジネスのふたりの王様、リック・フレアーとハルク・ホーガンが共存する空間だった。  スティングは、プロレスが教えてくれたさまざまなことを一冊の本にまとめた。  『モーメント・オブ・トゥルースThe Moment of Truth』はスティングの自叙伝といってもいいし、哲学とか宗教とかなにかそういうことを考えるため本、生きることを考えるための本ととらえてもいい。  2001年3月、WCWは活動休止-消滅した。プロレスはつづけるかもしれないし、つづけないかもしれない。もういちどリングに上がるためには、リングに上がる理由を探さなければならない。スティングは“プロレス浪人”になった。  そして、WCWの崩壊からじつに14年後、スティングはついにWWEと契約。“レッスルマニア31”(2015年3月29日、カリフォルニア州サンタクララ、リーバイス・スタジアム)でトリプルHと対戦した。  スティングとWWEの契約を実現させるため粘り強くネゴシエーションをつづけたのは、エグゼクティブ・プロデューサーとしてのトリプルHだった。 ●PROFILE:スティングSting 1959年3月20日、カリフォルニア生まれ。本名スティーブ・ボーデン。1985年11月、デビュー。ルイジアナUWF-NWAクロケット・プロ合併をへて、1988年に新団体WCWと契約。NWA/WCW世界ヘビー級王座通算7回獲得。得意技はスティンガー・スプラッシュ、スコーピオン・デスロック、スコーピオン・デスドロップ。2001年3月26日、“マンデー・ナイトロ”最終回でフレアーを下した。2015年、WWEと契約。2016年、WWEホール・オブ・フェームで殿堂入りと同時に引退を表明した。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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