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遺産相続の営業活動!? なぜ日本人は大変な「お盆の帰省」をわざわざするのか

 親元を離れて独り立ちしてから年月が経ち、生活の基盤を確立した大人にとって、故郷の実家はもはや他人の家だ。決して、我が家のように居心地のよい場所ではない。それでもなぜ日本人は万難を乗り越えてお盆に帰省するのだろうか。 帰省 社会学者であり、明治大学商学部教授の藤田結子氏によれば、先祖を弔うために国中の人間が同時期にいっせいに帰省してラッシュが生じるお盆は、日本や韓国で見られる風習だと言う。 「帰省すると、現代日本の抱える問題が垣間見えます。今の時代は30~40代男性の3~4人に1人は未婚で、3組に1組の夫婦は離婚しています。帰省して親族が一同に会すると、離婚して実家に帰ってきていたり、ずっと独身の身内がいて、気まずくて結婚関係や子供の話題を振ることができないという悩みは多いです」  一方で、未婚・既婚に限らず親族内のハラスメントが平然と行われているケースもいまだに多い。そうしたハラスメントを嫌って帰省をためらう人もまた多いのだ。 「子供がいない人に対し、親族からは悪気の有無に限らず“男は子供を持って一人前”とか“女は早く子供を産んだほうがいい”といった無神経な言葉も飛び交います」  しかし、時代の変遷によって変わってきた面もある。その最たる例が嫁と姑の関係だ。 「昔は夫婦と親が同居するケースが多かったため嫁いびりなどもありましたが、核家族化中心の今は“(めったに会わない)嫁に嫌われたくない”という姑も増え、嫁が家事をしようとすれば『いいからゆっくりしていて』と逆に姑が気を遣うケースも多いようです。60代前後の世代に顕著で、自分が姑で嫌な思いをしてきたから嫁には優しくしたいという心理も働いているのかもしれません」  それに今やお盆の文化自体も時代とともに形骸化してきた。 「今ではお盆提灯、ナスやキュウリを飾り、僧侶を迎えて読経するといった伝統を守っている家庭も少なく、帰省する理由が先祖の供養ではなくて、ただの親族への“顔見せ”になっている状況です。行事ごとに顔を見せに行かないと、相続に影響するなんて話もありますからね。ある意味で帰省は営業活動の一貫なのでしょう」  果たして先祖は浮かばれるのだろうか。 【藤田結子氏】 明治大学商学部教授。日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野が専門。著書に『ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常』(毎日新聞出版)など ※『週刊SPA!』8/7発売号「お盆帰省がツラい!」より 取材・文/野中ツトム、岡田光雄(清談社)

週刊SPA!8/14・21合併号(8/7発売)

表紙の人/ 小嶋陽菜

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