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全国で盛り上がる「明治150年」…戊辰戦争で“負けた側”の人々にとっては150回忌のようなもの

政府主導、全国各地で盛り上がる「明治150年」

4県知事

鹿児島、山口、高知、佐賀の各県知事が集まり、「薩長土肥」で明治150年を盛り上げていくことを誓った

 今年は明治元年から150年。政府はこれを記念する施策の推進を決定、政府主催による各種イベントや展覧会、記念硬貨の発行などを開催(または予定)している。  国土交通省は、旧伊藤博文邸などが並ぶ神奈川県大磯町の一角を「明治記念大磯邸園(仮称)」として整備中。さらに、慶応から明治に改元した日の10月23日には、政府主催の「明治150年記念式典」が開催される予定となっている。  8月31日には、明治維新で中心的な役割を担った薩摩(鹿児島県)・長州(山口県)・土佐(高知県)・肥前(佐賀県)各藩にあたる4県の知事が集結、連携して観光産業の育成・強化を図る広域観光プロジェクト「平成の薩長土肥連合」の開始を宣言。盟約締結式を行った。  政府の呼びかけに応じて、全国の都道府県や市町村、民間団体も各地で関連イベントを開催中だ。内閣官房「明治150年」関連施策推進室の開設するポータルサイトには、全国で行われるイベント情報が集約され、9月から11月にかけては毎日60~70件ものイベントが開かれるほどの盛り上がりを見せている。  これらの盛り上がりぶりについて、内閣官房「明治150年」関連施策推進室の担当者はこう語る。 「明治は激動の時代でした。近代化が進み、文化・芸術面でも著しく飛躍しました。とくに若い人たちには、明治という時代を学んでもらい、これからの生き方の参考にしてほしい。またそれぞれの自治体にとっては、明治を振り返りながら、地域の歴史的財産や地場産業、観光資源に磨きをかけてもらう機会になればと考えています」

「明治150年」ではなく「戊辰150年」と表現する人々

戊辰戦争150年

福島県立博物館で開催中の「戊辰戦争150年」展では、新政府軍の錦旗(錦の御旗)と奥羽越列藩同盟の旗の実物も見ることができる

 一方、越後(新潟県)や東北諸藩の地域の人々にとっては、この150年というのはまた違った意味を持つようだ。現在「戊辰戦争150年」展を開催中(10月14日まで。その後、10月26~12月9日に仙台市博物館でも開催予定)の、福島県立歴史博物館(福島県会津若松市)学芸員・栗原祐斗氏はこう語る。 「こちらの地域の人たちにとっては、明治維新150年を祝うというよりは、新しい時代がつくられる過程の戊辰(ぼしん)戦争で、たくさんの方々が犠牲になった。その人たちを追悼する150回忌、という感じが強いですね」  福島県の地元紙『福島民友新聞』では、昨年5月から週1回、戊辰戦争150年企画として「維新再考」という連載を掲載中だ。会津藩(福島県)が降伏した9月22日には『維新再考 「官軍」の虚と「賊軍」の義』というタイトルで単行本を刊行する。 「一般に伝えられている歴史は、どうしても明治維新を成し遂げた薩長の側からになってしまう。しかし負けた側には、違う歴史の見方・受け止め方があります。それを戊辰150年というかたちで伝えることにしたのです」(『福島民友新聞』編集局文化部担当記者)
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革命を成就させるには会津の“血”が必要だった
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【「戊辰戦争150年」展】10月14日(日)まで、福島県立博物館(会津若松市)で開催。9:30~17:00(入館は16:30まで)、毎週月曜日休館(月曜日が祝日の場合は翌日)。9月26日より後期展示となり、一部展示の入れ替えあり。10月26日(金)~12月9日(日)には、展示内容を一部変更して宮城県仙台市博物館でも開催予定。

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