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スマホ世代の若手社員はパソコンを使えない!? 混乱する現場の声

 会議や打ち合わせの場において、ノートパソコンを開き、メモや議事録を書く光景も珍しくなくなった。会議室内にはパチパチと規則的なタイプ音が響いていたが、突然、上役の怒声が響いた。

「君、会議中だぞ!」

 水を打ったように静まり返った会議室で、怒声を浴びた彼だけはポカンと口を開け、なぜ自分が怒鳴られているのかすらもわかっていない様子だった。現場に居合わせた、彼の上司にあたる堀部弘人さん(仮名)が説明する。

「彼はわが社に新卒で入った営業担当の社員です。が、今どきの子なのにパソコンが全くできません。書類を作るのもメールを打つのも全部スマホ。タイピングがうまくできず『フリック入力のほうが早い』といって、パソコンを使おうとしません。会議でも、彼はスマホを使ってメモを取っていたようですが、上役には“スマホで遊んでいる”と勘違いされたんでしょう」(堀部さん)

 情報化社会の中で、社員たちのITに対する知識や認識が開きつつある昨今。こうした小さなトラブルが増えている。

 世間では中年の情弱問題が取り沙汰されているが、スマホがあればなんでもできる時代の弊害なのか……若者たちの間でもIT格差が開きつつあり、パソコンが使えない人も少なくないらしい。

ミーティング

会議や打ち合わせの場では、ノートパソコンやiPad、スマホなど、様々なデバイスが活用される

スマホ時代の弊害「パソコンを使えない若者も多い」


 堀部さんの会社だけではなく、パソコンを使えることが必須条件のIT業界においても、このような若者が散見されるという。都内の通信インフラ会社に勤める佐々木逸男さん(仮名)も、ITに対する知識に乏しい新入社員に頭を悩まされているひとり。

「入社試験のときにも、パソコンで打ったエントリーシートや志望動機、履歴書などを提出させたはずなのに、実際はすべて親にやってもらっていたようです。タイピングだけならまだしも、パソコンの電源の入れ方や切り方すらわからない。文字を英語にする、ひらがなにする、そんな基本的なことすらわからないから書類が作れない。プログラミングやコード書きなんか当然できるわけもなく、入社後間もなく開発部から総務部に異動となりました」(佐々木さん)

 数度の面接でも「パソコンは得意」「プログラミングも少しかじった」と言っていた新入社員に後で問いただすと「内定から入社の間までに勉強しようと思った」らしいが、卒業旅行や遊びに時間を費やしてしまい「間に合わなかった」と弁解したという。

 いや、そもそも、そこを見抜けないほど杜撰(ずさん)な採用をしていた側にも問題がある。

 佐々木さんは「最近の若者ならパソコンは得意だろう」という思い込みがあったからだと言うが、パソコンに詳しくない若者もいれば、ネットリテラシーが低い若者もいる。情報化社会の中で育ってきたからといって、中高年より情報の取捨選択が得意、というわけでもないのだ。

 工業系の業界新聞記者である内山正人さん(仮名)も嘆く。

「業界向けの新聞を作っているわが社に、東京六大学の経済学部卒の新人が入ってきました。人当たりもよく仕事はできたのですが、ある時、有名企業の役員の訃報記事を書かせたところ、こともあろうか年齢を間違って報じたんです。お前ちゃんと資料読んだのか、と問いただしたところ『ネットで調べた』と。そのネットとは、ウィキペディアの情報だったんです」(内山さん)

 企業からはしっかり「プレスリリース」が出ていたにもかかわらず、ネットでさっと調べてしまったがために起きた「誤報」というわけだが、件の新人はネット情報、特にウィキペディアなどの無料で読める情報を「ネットに書いてあるからほぼ間違いない」ものと認識していたというのだ。

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若者たちのIT格差が拡大しつつある

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