更新日:2018年12月27日 22:03
ライフ

“ラブホ格差地帯”新宿歌舞伎町の正しい(!?)歩き方/文筆家・古谷経衡

前代未聞! ラーメンが「時価」のラブホ

 今回紹介するのはそんなCゾーンの中心に位置する老舗ラブホ「ホテル ラフランセ パリ」。平日宿泊5,500円均一という、Cゾーンの中でもひときわ廉価なラブホテルで、私の定宿の一つとなっている。1Fには広大な駐車場もあり、クルマ移動には困らないのも嬉しい。  大方、80年代に建設されたラブホはなぜかフランスに由来する建物名を冠していることが多いが、この物件もそれに漏れない。竣工当時はもっと鮮やかな白亜の外壁は若干黄ばんではいるものの、清潔感はある。  実際の内装やサービスはどうか。はっきり言って「安かろう云々……」の部類である。イマドキ珍しく近代化改修がされていない。驚くことに冷蔵庫はあるが持ち込み専用で、ブザー式課金自販機すら無い。

”お食事”は全て時価。頼むな、ということであろう

古典的なベッド。だが清潔感はある

持ち込み専用冷蔵庫には氷河がこびりついている

古典的な棚と冷蔵庫。だが電気湯沸かし器はあり、持ち込んだカップ麺を食すのに嬉しい

 ルームサービスは事実上絶無に等しい。メニューボードは一応あるが、カツ丼やラーメンやそばが「時価」となっていて、事実上の注文を拒否している。私はこれまで数百万円を投じて様々なラブホを渡り歩いてきたが「ラーメン時価」というラブホは本物件が初めてである。  しかし私は、このラブホに不満を感じたことは一度もない。土曜日の夜も空いているし、なにせ料金が安い。外国人宿泊客の急増で、都内のホテルも単価が高くなっている。イマドキどのビジネスホテルでも、まして都内で「一泊5,500円」というのは見当たらないであろう。それぐらいこの物件は独りラブホ実践者にとっては良いのだ。よって出来れば紹介したくなかったが、歌舞伎町に於ける独りラブホの神髄を象徴する物件であるといえよう。 ●ラブホテルQ&A Q ラブホの室内で買うお酒や飲料は高いイメージがありますが…… A 高くありません。最近のラブホは、室内自販機でチューハイ1缶250円、ビール1缶350円(共に350ml)、ノンアルコールペットボトル飲料(500ml)150円が相場となっております。一旦カギをフロントに預けて雨の降りしきる中、コンビニまであてども無く歩き、また酒を買って戻る労苦を考えれば、実に安価といえましょう。そんなことで高いと嘆くのなら、『賭博黙示録カイジ』で地下帝国の「班長」がやる物販の方がよほど阿漕な商売といえましょう。ラブホの自販機は最早良心的といえます。過去の観念は捨て去って、どんどん注文しましょう。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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