更新日:2018年11月18日 17:21
ライフ

ラブホ業界は改装ラッシュ。千葉県松戸市にもラブホルネサンスの波が…/文筆家・古谷経衡

独りラブホ考現学/第5回

新設のできないラブホは改装ラッシュ

 少し前に、テレビ朝日系列で放送された「大改造!!劇的ビフォーアフター」という番組が流行った。番組内容は読んで字のごとく、著しく老朽化した住宅、住宅内動線が間取りのせいで不自然に歪んでいる、バリアフリーに未対応である、再建築しようにも狭小地である、もしくは建ぺい率や容積率・北側斜線等の規制があって上手くいかない――などなど、構造上著しく旧態依然とした住宅を「匠」の住宅建築士らが見違えるほど近代的で使いやすい住宅にリフォーム・再建築するというもの。
Meria

大改装された「Meria」(旧「ホテルリバーサイド」)。千葉県松戸市

 その結果は実に見事なもので、同一の土地に建設された住宅とは到底思えない「劇的」な変貌ぶりで、筆者も視聴者のひとりとして毎回目を見張ったものである。  そして今、このような「劇的」とは言わないまでも、ラブホ業界のトレンドは「大改装と近代化改修によるリニューアル」である。  そのそもラブホテル業界は「新設」という概念が殆ど無い。ラブホテルの規制法は、風俗営業法であり、その新規立地には重大な規制(学校等との距離など)が多く、実質上、特に都心部でラブホテルを新規に建設することは不可能な情勢である。  つまり現在のラブホテル業界は、既にある既存の物件数を上限として、その既存店舗間の競争という構造となっている。そこで、21世紀に入って増えてきたのが「リゾート型」と呼ばれるラブホである。これは、「連れ込み旅館」という概念に毛の生えた最低限度の設備を備えた前近代的なラブホ観を良い意味で裏切るもので、特に女性客に訴求したリゾートタイプの内装と外観を誇る新機軸の隆盛である。  この筆頭は、都内繁華街を中心に次々と勢力を拡大しつつあるホテルバリアンリゾートグループである。同グループは、旧来のラブホ街の中でひときわ目立つ南国リゾート風(バリ島風)を模した熱帯デザインと、洗練されたアメニティと内装でまたたくまに「リゾート型ラブホ」のパイオニアになった。  このバリアンリゾートの快進撃が、ラブホ界に衝撃を与えた。つまり「ヤるだけの設備があれば良い」と考えていた従来のラブホ経営陣は、既存の物件を前近代的な内装・外装から、大きく「リゾート型」に転換しないと生き残れないという改革のインセンティブを与られたのである。  そこで目下、1970年~80年代に建設されたラブホは、現在続々と「大改装と近代化改修によるリニューアル」の時期にさしかかっている。このラブホ近代化の波を、筆者は「ラブホルネサンス期」と勝手に呼んでいる。そしてこのラブホ業界のルネサンス運動は、郊外、都市部、郡部を問わず、現在列島を猛烈に席巻中であるのだ。  今回取り上げるのはそんな「ラブホルネサンス期」のただ中で「大改装と近代化改修によるリニューアル」を終えたばかりの千葉県松戸市の「Meria」。同ホテルは、東京外環道三郷南ICの至便にあり、この地域一体では他に競合店舗が存在しない住宅地に立地している。

 外装も刷新され、間接照明が導入された「Meria」

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ラブホが生まれ変わる瞬間を目の当たりにした
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(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数

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