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なぜ私たちはイライラしているのか? スマホが生んだ症候群

自分の評価が「見える」化した時代

 電車の中でスマホを見る。興味あることが続く。で、駅に電車が止まる。降りようとしたら、出口で立ち止まっている奴がいる。  これ、瞬間的にイラッとしますよね。なおかつ、この立ち止まっている人が、スマホを見ていたりするとイライラは倍加します。「あなたは自分の快適さを追及していて、こっちはホームに降りられない」という、あなただけいい目を見ているという感覚になるのです。  インターネットによって、自分の評価が「見える化」しました。「いいね」がいくつ押されるか、フォロワーが何人いるか。スマホはそれを日常の生活に持ち込みました。  みんな、自意識を肥大せざるを得ない状況に放り込まれました。昔だったら、評価される場はテレビや新聞のマスメディアしかありませんでした。基準は全国レベルでした。  けれど、ネットの発達で、なにげないことで評価されるようになりました。自意識がどんどんと育てられます。  一番簡単に書ける文章は批判です。なにかにケチをつけて、文句を言うことは、なにかを0から創造するよりはるかに簡単です。  でも、批判すると批判され返される危険があります。  批判だけして、絶対に文句言われないのは、「正義の発言」です。  20歳未満がお酒を飲んでいたとか、信号無視していたとか、タレントの愚かな行動に関しての発言は、絶対に否定されません。  すべて、「自分はこんなレベルじゃない症候群」の結果です。自分はもっとすごい奴なんだ、もっと人から認められるし、発言の影響力があるんだ、ほら、ツイート数がこんなにある。  本人の問題ではありません。スマホというシステムが、この症候群を生んだのです。  そして、結果的に、みんな相互監視の状態になりました。道徳的に厳しいからではなく、道徳的に厳しい発言は誰からも責められないから。  息苦しい国に、ますます、なるでしょうなあ。  さて、そんな2019年をどうやって生きるか。  少しでも楽になる方法を、ああでもないこうでもないといろいろ探っていこうと思います。今年もよろしくお願いします。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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