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理解されない「発達障害グレーゾーン」という存在

 SPA!でも’18年に2度にわたり、大特集を展開した発達障害。その取材をきっかけに生まれた『発達障害グレーゾーン』(姫野桂著)も発売即重版となるなど、大きな反響を呼んでいる。第3弾となる今回は「発達障害という診断名がついていない人々」の苦悩を追った。

「グレーゾーン」はなぜ理解されないままなのか?

 発達障害の認知度こそ上がったものの、「見落とされている存在がいる」と、発達障害当事者を多数取材したライターの姫野桂氏は指摘する。 「発達障害の特徴はグラデーション状にもかかわらず、その診断は“クロ”か“シロ”しかない。発達障害には主に3種類(ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害))ありますが、マルチタスクが苦手だったり、人とのコミュニケーションの取り方がわからず、悩む方が数多く見受けられます。 しかし、そうやって実際に仕事や日常生活において困っているのにもかかわらず、医者から『傾向はありますが、気にならない程度でしょう』と診断が下りない、いわゆる“グレーゾーン”の層がいるんです。 最終的には医者の裁量次第にもかかわらず、その判断基準が医者によって大きく異なっていることもグレーゾーンを生む一因になっています」  そうした、グレーゾーンの人々は世間的にも見落とされがちだ。その一因をこれまで2000人を超える発達障害当事者と面談してきたカウンセラーの吉濱ツトム氏は「時として“クロ”とは真逆の特徴も持つからではないか」と分析する。 「一般的に発達障害の代表的な例とされる『空気が読めない』という傾向。しかし、グレーゾーンはむしろ読みすぎて疲れてしまう人が多いんです。繊細で、真面目で責任感や劣等感が強い人。いずれも一般的な発達障害のイメージとは大きく異なりますよね。ただでさえ、グレーゾーンの人は傾向が見える場面が少ないうえ、逆方向の特徴があれば、専門家以外が正確に捉えるのは容易ではありません」  ほかにも誤解が拭えていない現実がある。今回、発達障害のイメージについてアンケートを取ったところ、「コミュニケーションが苦手」「衝動的な行動」などといった項目が上位に入ったが、いずれも正確とは言い切れないと吉濱氏は指摘する。 Q「発達障害」に関するイメージとして持っているものを選んでください(複数回答可) ※30~40代男性300人を対象にアンケート(’19年1月21日~23日に実施) ・コミュニケーションが苦手 55% ・空気が読めず、言っていいことと悪いことの判断ができない 42% ・衝動的な行動を抑えられないときがある 38% ・集団行動が苦手 36% ・特定の才能を有している 35% ・知能に問題を抱えている 29% ・自己中心的な言動を取る 25%
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発達障害といっても千差万別
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発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害の認知が広まるなかで増える「グレーゾーン」に迫る

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