自衛隊員の引越し費用は半額自腹!? 上限を超えると自己負担に…
「自衛隊ができない100のこと 53」
自衛官に転勤は付きものですが、その勤務地は様々であり、都心にある防衛省の勤務から山の上のレーダーサイト、無人島の硫黄島など範囲も広大で多岐に亘ります。そのような転勤先に賃貸住宅が十分あるとは限りません。自衛官の引越しでは一般と難易度が違うと考えるべきです。
たとえば、与那国島のような既存住宅が少ない赴任地に引越しする場合はどうなるのでしょう。もちろん国が責任を持って官舎や隊舎を手配してくれればいいのですが、それは期待するだけ無駄です。国には自衛官の日常生活基盤を考慮するような発想も予算もありません。それどころか、自衛官のための官舎を「無駄」と考え、減らしているのが現状です。それでも賃貸住宅がたくさんある場所であれば、探し回れば適当な物件を見つけることもできますが、住宅がほとんどないような場所だと悲惨なことになります。
2016年3月、与那国島に新たに陸上自衛隊の駐屯地が配備されました。3月18日付の八重山毎日新聞によると、新築の官舎18戸に家族連れの隊員が入居したようです。しかし、実際に配置された隊員数は139人であり、その家族も89人いました。当然、その官舎の規模では全然足りません。そのため、独身の隊員は仮宿舎に入り、家族連れの隊員は賃貸で民家を借りたと記事にあります。
しかし、この仮宿舎というのは「工事で使ったプレハブやコンテナの再利用」です。賃貸した民家というのも廃屋を借り上げて改修したもので、シャワーしか使えないような状況だったと聞いています。国境の島で沿岸監視をしてくれる最前線の隊員たちに対してこんな待遇でいいのでしょうか。申し訳ない気持ちになります。
なぜ、すべての隊員分の新築住居を準備しなかったのでしょうか?必要な戸数を先に準備しておくことができる予算がとれないことが悲しいです。その後、独身の隊員については風呂付の隊舎が完成し、そちらに移動しました。しかし、家族のいる下士官や独身の幹部は今もお風呂すらない環境で過ごしているようです。南の島でお風呂なしはキツイはずです。こんなことでいいのでしょうか。
沖縄・与那国駐屯地の過酷な住宅事情
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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