更新日:2023年03月20日 11:20
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昭和でもおっぱい、平成でもおっぱい、令和でもおっぱい。おっぱい神話は終わらない――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第40話>

みんな、一瞬で元気になった

 「おっぱい」  とだけ書かれた紙が出てきた。  「おっぱいとだけ書かれてます」  見ると、けっこう達筆な感じ、毛筆で本当に「おっぱい」と書かれていた。何が何やら分からない。  こりゃあ大変なことになったな、そう思った。心の支えであったじいさまの残したメッセージが「おっぱい」なのだ。なんか家族でテレビを見ていたら突如としてエロいシーンが始まった、みたいなばつの悪さがある。どうなってしまうんだ。関係ないながらもハラハラした。  「じいさまらしいや!」  「わははははははははは!」  「俺なんか元気出たっすよ」  一気に場が和んだ。おそらくではあるが、生前からそういったジョークをする類の爺さんだったのだろう。そう、それと同時に「おっぱい」という文字には場を和ます不思議な力があるのだろう。  常連の皆が笑い、また笑顔でビリヤードの練習へと戻っていた。爺様が書いた達筆なおっぱいはそれからしばらく、ビリヤード場の掲示板に貼られ、その後は額縁に入れられたのだ。  おっぱいという文字には不思議な魅力がある。ここで勘違いしてはいけないのは文字に魅力があるのだ。決しておっぱい自身に別に魅力は、うーん、ある、おっぱい自身にも魅力はある。けれども、文字の時点で「おっぱい」は神なのだ。なんだかワクワクしてくるそんな魅力がこの文字にはある。  みんな「おっぱい」で元気になった。ただソバージュの子だけが「そんなにいいですかね、おっぱい、私ももっとあれば」と少し冗談めかして言い、片づけていたビリヤードの球を2つ、胸にあてがってみせた。  ふざけるんじゃねえ、おっぱいがそんなカチカチなわけないだろ。それは「おっぱい」じゃなくて「たきくせ」だ。 【pato】 テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri) ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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