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マフラーは首に巻くもの。そう思っていた時期もありました――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第38話>

 昭和は過ぎ、平成も終わりゆくこの頃。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! patoの「おっさんは二度死ぬ」【第38話】首なしライダー伝説  生まれ育った街は小さな漁港だ。  美味しい魚とカニと、あとマンガのキャラクターの銅像、それくらいしか特徴のないずいぶんとありふれた街だ。こんな場所は日本中どこにでも溢れているのだろう。街を出て暮らすようになって初めて気が付いたことだ。  ついこの間、ちょっとした用事があってそのありふれた街に帰ってみた。車を運転して帰るその道中、特に考えや狙いがあったわけではなく、ただ本当になんとなく、いつもは使う国道を使わず、ちょっと遠回りする脇道を使ってみた。まだまだ街までは少し遠い、それなのになぜこの道を通ることにしたのか分からなかった。  山を越えるらしく、長い長い上り坂があった。ちょっと遠回りといったが、とんでもない遠回りになってしまいそうだ。その坂道の頂上には妙に古めかしい、それでいて何やら不気味なトンネルがぽっかりと口を開けて待ち構えていた。  「まるで地獄に続いていそうなトンネルだな」  ハンドルを握りながらそう呟いた。それと同時にある記憶が思い出された。そう、おそらくこの尋常じゃない遠回りはこれを思い出すためだったのだろう。  なんの変哲もないありふれた街、そんな街の少し手前にあった少し不気味なトンネル。遠い記憶が思い出された。  あの夏だ。うるさい蝉の声だ。そこに混じって高校生だった僕たちの声がフラッシュバックした。  「暑すぎる」  「暇すぎる」  「女がいなさすぎる」  何もすることがなかった僕たちは、口々にそう言って、近所の公園に入りびたり、木陰で暑さをしのいでいた。コンビニなんて存在しない田舎だ。暇をつぶせる若者向け施設なんてありゃしない。ただただ、近所の公園で小学生に混じって暑さをしのぐのが精一杯だった。  「じゃあさ、幽霊トンネルいかねえか!?」  高岡がそう言った。高岡はグループの中で一番のお調子者で、そういった噂話が大好きな男だった。あと、バカだった。  なんでも、ここから自転車で1時間くらいいった山越えの峠に恐怖のトンネルなるものがあるらしい。そこでは夜な夜な首なしライダーが現れて、訪れた者の首をつけ狙って追いかけてくるらしい。  「すげえんだぜ、首なしライダー、なんでもそのトンネルで事故して首がなくなった人の霊らしくてさ、夜な夜な首を求めて彷徨っているんだとよ。血まみれのヘルメットで現れるらしい。怖いだろ」  高岡は興奮気味にそう話していたが、はて、首なしならヘルメットいらないのでは? むしろヘルメットしていたら首があるように見えるのでは? などと考えたが、それはたぶん野暮なことなので言わないでおいた。  「夜になったらみんなで行ってみようぜ!」  高岡は首なしにヘルメットの矛盾にも気づかず、無邪気な笑顔でそう言った。
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トンネルは、首なしライダーの霊が夜な夜な現れるといった
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