更新日:2023年03月21日 15:41
ニュース

総理と「桜を見る会」でハシャぐ有名人の気持ち悪さ/古谷経衡

権力者と桜を見る権利に8万円の値段がつく?

 聞けばこの「桜を見る会」、各自民党員に招待枠が設定され、16日に配信された「FRIDAYデジタル」の情報では、ダフ屋が8万円の値で捌いているともいう。真偽のほどは定かではないが、「国家の最高権力者と一緒に桜を見る権利」が、招待を受けることのない市井のでしゃばりにとっては8万円の値になるということだ。アホらしさもここまで来ると一種の「伝統」の終焉のようで興味深い。
新宿御苑

桜を見る会が開催された新宿御苑

 豊臣秀吉はその晩年、全国の諸大名から約1300人の女房女中衆を動員し、「醍醐の花見」(1598年)を開催した。“派手”を好む秀吉の、最晩年の大宴会としてその模様が後世に伝わっている。裸一貫、尾張中村の足軽の倅から(諸説あり)天下人に大出世をした秀吉の最後の晴れ舞台であった(秀吉は同年没)。しかしその陰では、二度にわたる朝鮮侵略により政権内部は疲弊し、その間隙をついて徳川家康が実質的な秀吉の後継人として信頼を集めていた。実際、この壮大な花見からわずか17年後、大坂夏の陣にて豊臣家は徳川家に敗れて滅亡する。  現代人も同じで、所詮浮世の権力者は、その最後の最後、我が世の春を謳うべき巨大なハレを演出して終わるのではないか。絶頂は常に衰退と共にある。「桜を見る会」の狂騒が、ちょうど絶頂から衰退の端境期にあたるのではないか、と想像する知恵者は、おそらく御苑にはいなかったのであろう。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
1
2
おすすめ記事