更新日:2023年03月28日 09:13
エンタメ

サカナクション・山口一郎が明かす「メジャーになると同時に生まれた葛藤」とは?

“血が濃い人たち”はずっとついてきてくれた

――バンドの方向転換をした手応えはいかがでしたか? 山口:「グッドバイ/ユリイカ」を出して、「さよならはエモーション/蓮の花」と、同じように内省的なシングルを続けて出したけど、セールスは下がらなかったんです。だから“血が濃い人たち”がずっと追い続けてきてくれたんだと思いました。でも、今度はその輪を「外」に広げないと、僕が本当に彼らを連れていきたい場所にはたどり着けないと思ったんです。 それがどこなのかというと……僕はサロンっていう言い方をしているんですが、人が集まる空間をつくって、そこで音楽以外のさまざまなカルチャーに触れて、最終的にはサカナクションを巣立っていく、そんなフォームをつくろうと思ったんですね。それが「NF」なんです。「サカナクションを好きになると音楽以外のおもしろさも知れるよ」という場所をつくれたことが、すごく大きくて。「新宝島」には「このまま君を連れて行くよ」という歌詞がありますが、それはつまり、NFやその先にある世界のことだったんです。 ――その周辺ではパリコレでサウンドディレクションを手がけたりもしていましたね。 山口:ええ。ANREALAGEというファッションブランドの音楽を作っていて。ただ、そこでファッション業界の人と話すと、「フェスに行く人ってダサいですよね」って言うんです。みんな首にタオルを巻いて、同じTシャツを着て「全然ファッショナブルではない」と。それで僕、「世の中が『フェスはダサい』って認識になったら、音楽業界が終わる」と思ったんです。’70~’80年代って、レコードジャケットにアーティスト作品を取り入れたり、デザインと音楽とが密接に関わっていましたよね。音楽が好きな人がカッコよかった。 けど、今がそうじゃなくなっているなら、もっと違うものを音楽の中に取り入れないといけない。じゃあ自分は、音楽を作る以外にどんなやるべきことがあるのかな、と考え始めて……、それでいろんなジャンルに興味を持ち始めたんです。アートも、ファッションも、食も。いろんな人に会って、話を聞き集めました。 ※6/25発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【山口一郎】 ’80年、北海道小樽市出身。サカナクションのボーカル&ギターであり音楽的支柱。’07年サカナクション結成、同年にメジャーデビュー。’13年のアルバム『sakanaction』でオリコン1位を獲得、NHK紅白歌合戦に初出場 取材・文/兵庫慎司 撮影/尾藤能暢 ヘアメイク/根本亜沙美 スタイリスト/三田真一(KiKi inc.)
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週刊SPA!7/2号(6/25発売)

表紙の人/ 玉城ティナ

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