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サカナクション・山口一郎が明かす「メジャーになると同時に生まれた葛藤」とは?

 ツアーチケットは即完売、アルバムはオリコン1位、紅白出場etc.今や誰もが認めるトップバンドになったサカナクションが6年ぶりに待望の新アルバム『834.194』をリリースした。前作から意外なほど期間が空いた裏には「メジャーになる」という成功像に疑問を抱き、バンドのアイデンティティをも揺らす彼らならではの葛藤があった。常に言葉やシステムと格闘し続ける音楽家・山口一郎が今だから話せる本音とは――。

撮影/尾藤能

ある種の“政治”を使いだしたらバンドが終わると思った

――前アルバムから6年も空いたのは、一区切りという意味もあったんでしょうか? 山口:チームとして、アルバムセールス20万枚&ツアーのソールドアウトを目標にしてやっていたんですが、あの段階で達成してしまって。紅白にも出たし、マジョリティ側にも刺さるようになって「さらに上を目指そうか」と、みんなで話をしたんですが、これ以上行くにはもっとテレビに出なきゃいけないし、ある種の“政治”も使わなきゃいけない。 そういうことには意味がないというか、それをやっちゃうとバンドが終わってしまうと思ったんです。「上」に行くためには想像を絶する“やりたくないこと”もやらなきゃいけない。40歳になってもステージの上でタテノリをあおったり、MCでくさいことを言ったり。それは絶対無理だと思いました。 ――メジャーバンドになると同時に葛藤が生まれたわけですね。 山口:サカナクションのコンセプトは最初、「歌謡曲とダンス・ミュージックの間を行く」でした。マジョリティを好きな人にもマイノリティのおもしろさを知ってもらいたいし、マイノリティ側の人にはエンターテインメントの作為性を理解してもらいたかったんです。 もう一度そこに立ち返ろうとしたときに「これは一度、ドロップアウトしなきゃいけない」と思いました。それで「グッドバイ/ユリイカ」という内省的なシングルをリリースしたんです。それで、もっとパーソナルなものを好きな人たちを集めていくというか、血を濃くしていくというか……そういう活動をしていくうちに、気づけば6年もたっていたという感じです。
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“血が濃い人たち”はずっとついてきてくれた
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