更新日:2019年10月30日 21:06
エンタメ

総制作費38億円、愛の歌だけを歌うミュージカルのこと/鴻上尚史

総制作費38億円、愛の歌だけを歌うミュージカルのこと

 ニューヨークに7月に行った時に新作ミュージカル『ムーラン・ルージュ』を見ました。  ユアン・マクレガーとニコール・キッドマン出演で、名匠バズ・ラーマン監督で2001年に映画になった作品の舞台化です。  パリにあるキャバレー、ムーラン・ルージュを舞台に、若い作家と踊り子の恋物語が描かれます。  目玉は、名曲の愛の歌をこれでもかっというぐらい歌うことです。  映画版では、ビートルズだのエルトン・ジョンだのマドンナだのの名曲を惜しげもなく投入しました。 「なるほど、この手があったかと」と映画を見た時は唸りました。  既成の曲を物語の中にぶち込むスタイルを「カタログ・ミュージカル」とか「ジュークボックス・ミュージカル」なんて言います。ま、ちょっとおとしめた言い方です。  世界的に一番ヒットしたのはもちろん、ABBA(アバ)の曲だけで作った『マンマ・ミーア!』ですね。この作品の成功で、全曲既成の曲というスタイルが流行り定着しました。  それ以降、ビートルズもキャロル・キングもクイーンも、とにかく、いろんなアーティストの既成の曲を使ってミュージカルが作られました。  が、「愛の歌」限定というスタイルはなかったのです。  舞台版では、さらに「愛の歌」が最新版にアップデートされていて、マドンナからビヨンセ、さらにガガ、そしてブリトニーという流れで怒濤のように歌うシーンもあって、興奮しました。  総制作費38億円。ミュージカルの制作費が38億円ですぜ。これで当たらなかったら、何人が首つるんだろうと震えますね。  使用楽曲70曲。ワンフレーズしか歌わないという曲もけっこうあります。「サ~ウンドオブミュ~ジック」と、名作『サウンド・オブ・ミュージック』からは、この部分だけを選んで歌っていました。
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