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体験型ショー『Tamara』がワクワクする理由/鴻上尚史

ブロードウェイ

体験型ショー『Tamara』がワクワクする理由

 あっと言う間にニューヨークから日本に戻ってきました。  さて、前回の続き、好きな登場人物の後について回りながら、物語を体験する『Tamara(タマラ)』の話です。 【前回記事】⇒NYで見た体験型ショー『Tamara』のこと  廊下で、女中についている観客だけが切ない顔になり、バカ息子とファシスト党の青年の後ろについている観客はニヤニヤしているという、衝撃の体験をした後、女中さんは、いろいろと働きます。僕達も、その後ろについて回ります。  一時間ぐらいした所で、女中さんが最初の大広間に入ってきます。そこには、他の登場人物も全員集まっていて、なんとテーブルの上には、サラダとパン、お肉とスープがバイキング形式で用意されています。  突然、執事が、「さあ、みなさん、食事の時間です。知らない者同士、『あの後、どうなったのか?』を話しながら、お食事をお楽しみ下さい」と言って、10人の登場人物は静かに去るのです。  僕は、見るからに英語ネイティブじゃない人に向かって(ネイティブだとペラペラッと言われて、お手上げですからね)、「Who do you follow?」なんて質問し、相手がタマラをフォローしていると答えると、「メイドがコーヒーをサーブした後、主人がタマラに近づいたでしょう。何が起こったの?」なんて、とつとつと拙い英語で聞き、相手が「タマラは拒否した」なんて答えると、「オウ」なんて、肉を食いながら反応しました。  で、食事の時間が終わると、また10人の登場人物が集まってきて物語は再開されます。  もちろん、ここで後をつける人を変えるのも自由です。いろいろと、人の話を聞いて、「どうも、○○が面白そうだ」と思った人は、別の人物に変えていました。  で、いろいろとあって、最後に、突然、銃声が鳴り響きます。  その時、女中は地下の厨房にいましたから、音を聞いて全力で走り始めます。当然、後ろについている僕達も必死で走ります。  銃声のした玄関までぜえぜえ言いながらたどりつくと、主人が倒れていて、女主人が銃を持ったまま呆然とした顔で立ち尽くしていて、タマラが驚愕の表情でそれを見つめています。三人の後ろの観客達は、それぞれに驚いています。
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巧妙な進行とぶ厚い台本
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