マーケティングの常套手段は共感。それって本当?
高瀬:あえて言いますが、マーケティングの常套は共感だと言われるじゃないですか。そういう意味では、もはや次のステージは共感じゃないのかもしれないね。
中島:そうですね。共感の総量って、その時代にどれだけ人が苦悩しているのかと、比例しますよね。今の日本はみんな悩んでるから、共感するようなコンテンツがめちゃくちゃ売れる。
高瀬:そうなってくると、もう共感自体がフェイクかもしれないですね。「共感したい!」と思ってる人のためのものだったり。
中島:そうですね。高瀬さんの本にも書いてあったと思うんですけど、マーケティングは一つデカいパイをとって、そこからどう狭めるか、どこに向けてやっていくかだと僕も思っていて。テレビや雑誌は、パイとして共感を取りにいってる。それが数字も取れるし、儲かるからやってる。だけど、YouTubeは共感を売ってない、全然媚びてない。たまたまそれに共感する人はいても、自分から取りにいってないんですよね。
高瀬:共感って、やっぱり情報だもんね。
中島:もちろん、共感コンテンツで面白いものもあるんですけどね。僕が最近見てるのは50歳のYouTuber。リタイアして、いかに自分はお金持ちに近づくかってやってるんです。でも、「贅沢やめられねえ」とか言って、毎月残高が減っていくんですよ(笑)。これがなぜ面白いかって、社会が将来に対する漠然とした不安を抱えるなか、50歳の人が「また減っちゃった」みたいにやってるところだと思うんです。今の日本の状況じゃないと面白くならないコンテンツだから、そこは大事だと思って。
高瀬:共感は受け手が見つけるものですよね。拾いに行くものじゃない。それってやっぱり、ドキュメントじゃなきゃダメなんですよ。
中島:そうそう! だから置いてあるものがいいなと。共感に関しては。
高瀬:ドキュメントですよね。中島さん自身もそうだし、50歳のYouTuberもそうだと思う。
中島:そうですね。僕に集まってくる人も、価値観に対する反発という意味での共感もあるだろうし、単純に面白いもの見たさもあるだろうし。なんなんでしょうね。よくわかんないものって、みんな好きじゃないですか。色んなコンテンツがありますけど、変わってますよね。何が受けるかって。
高瀬:何が受けるかなんてわからないですよ。わかったら、預言者笑。中島さんが20年前に生まれてたらやばいですよね、みたいなお話ししましたけど、もしかしたらめちゃくちゃ社会システムに順応して生きていたかもしれない。
中島:そうかもしれないですね。わからないですけど。今の状態を安定と呼ぶんだったらそうだし、押し付けられたストレスと自分から取りに行ったストレスは全然違いますよね。筋トレって、ストレスじゃないですか。でも、自分から取りに行った人は、楽しそうにやってる。物理学的にみたらストレスを与えられてるだけなのに。
よくわかんないものって、みんな好きじゃないですか。色んなコンテンツがありますけど、変わってますよね。何が受けるかって(中島氏)
高瀬:多くの人が「好きなことをやりなさい」って意訳しちゃってるじゃないですか。それはピンときづらい。でも、今おっしゃったように、自分から取りに行ったストレスなのか、というふうに言い換えてあげると、ピンと来るかも。素晴らしい言い換えですね。
中島:僕はつまらない仕事は、お金渡されてもやりたくないんですよ。ほとんどの人はお金が価値のあるものという価値観だけど、僕からすると「何に使うの?」っていうところがあって。1000万円とかだったら良いですけどね。だったら、面白い人をキャスティングしてトークイベントやります、みたいな方が僕からしたらノーギャラでも得。自分が欲しいものなんだけど、社会的にはあまり価値を認められていなくて手に入りやすい、みたいなものはあります。それを取りに行くのが僕のテーマです。
高瀬:いやー、いい勉強になりました。
中島:いやいや、適当に喋っただけなんで(笑)。
高瀬敦也
株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビのプロデューサーを経て独立。音声と写真のコンテンツプラットフォームアプリhearrの企画やマンガ原作・脚本制作、アイドルグループ、アパレルブランドのプロデュースを手掛けるなど、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。著書に『
人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
中島太一
プロ奢ラレヤー。22歳。年収1000万円の奢られ屋。Twitterを介して出会った様々な人に「奢られる」という活動をし、わずか6か月でフォロワー2万人を獲得。現在、フォロワー8万人超。
<取材・文/高橋孝介 撮影/Coji Kanazawa 取材協力/AOYUZU恵比寿>