4軒目はまさかの…
「雅」でだいぶゆっくりと飲み、さてこのあとはどうしようか。もう夜も遅いが、正直まだ小林家の人々に遊んでほしい。もう1軒だけでもいいからご一緒したい。もちろん小林家はその気持ちを拒まない。大海原のような広い懐ですべてを受け入れてくれる。こうなってくるともう、どこまで拒まないのかが気になってきた。
というわけで向かった先は…
まさかの……
小林家!!!
数時間前に出会ったばっかりなんですけど……。あと清野さん、犬好きすぎ!
パリ:清野さん、ここまでくると、もはやどうかしてません? この家族。
清野:「家、ついて行ってイイですか?」の海賊版ですもんね。
パリ:こんな3人組、清野さんだったら家に入れます?
清野:やですよ〜。こんな時間に、こんな怪しいやつらを自宅に入れるの! 確実に断るか、撒(ま)きます(笑)。
パリ:ですよね。しかしまた、なんて素敵な家なんだろう。夜なのに部屋の中が「陽」のオーラでまぶしいくらいです。
清野:冷静に考えるとお言葉に甘えすぎな気がしますが、ここまできたら小林家には一生甘えていきましょう!
パリ:ですね! さっき奥様、「お花見の時期にまた来なよ〜!」って言ってくれてたし(笑)。あ、そういえば清野さん、小林家に行く途中のコンビニで、「なんでも買ってください! どんどん入れてください!」って、取材なのに自腹切ってましたね。あれも完全に「家、ついて行ってイイですか?」の流れ(笑)。
清野:流れというか、完全にパクリました(笑)。あと「小林家ハイ」にもなってたみたいで、この家族のためなら何でもしてあげたい衝動に駆られちゃいまして…。
パリ:ただ、みなさん「え〜いいよ〜」って、控えめでね。横で見てる俺まで、「もっと入れればいいのに〜!」とか思っちゃって。
「え〜これくらいでいいよ〜」
清野:本家でもたまに、なんでも買っていいって言われてるのに、控えめに数百円しか買わない人がいるんですよ。 そういう人って、たいてい良い家族&感動エピソード持ってるんですよね。
パリ:小林家、当てはまりすぎ!
窓からの眺めも素敵すぎ!
全員、このまま泊まっていきたいのはやまやまだったが、小林家には、初対面としてはじゅうぶんすぎるほどに甘えさせてもらった。せめてもの節度ということで、それぞれに買った酒を1杯ずつ飲んで、おいとまさせてもらうことに。
清野:俺、完全に「ここの家の子になりたい」って思っちゃってたんで、さっき帰るとき、なんでパリッコさんと井野さんだけじゃなくて、俺まで帰らないといけないんだろう……って思いましたよ。
パリ:わはは! それは俺も同じですよ! しかし本気であのご主人、淳さんのような男になりたいなぁ。
清野:新しい人生の目標ができちゃいましたね。
「またいつかこの家に『帰ろう』と思いました」(清野)
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以上、飲みに行こうよ!赤じゃない街にさ! 今回は途中から「お花茶屋編」ではなく「小林家編」になってしまったが、またしても忘れがたい一夜の出来事だった。
もしいつかあなたの街に我々がお邪魔した際には、ぜひぜひ、断ったりまいたりせずにご自宅にお邪魔させてほしい。
<TEXT/パリッコ イラスト/清野とおる>
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):
@paricco