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「日本は財政破綻する」はウソ…国のB/Sを用いて解説

日本の稼ぐ力はどのくらい?

 ここまでの話をまとめます。  日本は、借金はあっても資産はあるので大丈夫。歳出も、税収アップにつながるので大丈夫。  もう、大丈夫すぎるのです。では、最後に日本がどれくらい稼ぐ力があり、何で稼いでいるのかを解説しましょう。その指標を示しているものが、「経常収支」です。  経常収支とは、貿易やサービスなど、海外との取引で生じた国全体のお金の収支のことです。  2018年の日本の経常収支は19兆円。  つまり、一年間で19兆円の稼ぐ力があるのです。  対して、29年前の1989年度(平成元年度)の経常収支は、約9兆円。黒字の規模は約30年で2倍以上になっているのです。さらに、その中身も大きく変わっています。  経常収支のメインは、2011年前後を境として貿易ではなくなってきています。では、なんでしょうか?

平成30年6月22日 財務省国際局 「経常収支の構造変化」より

いまの日本の稼ぎ頭は、貿易ではなく…

 答えは、第1次所得収支。「第1次所得収支」って、なんでしょうか? その内訳は、大きく分けて2つあります。 【第1次所得収支】 1 海外子会社のもうけである直投収益 14兆7198億円 2 外国債券の利子などの証券投資収益 9兆7659億円  一方、過去メインだった貿易黒字は今や1兆1981億円となっています。「海外子会社のもうけである直投収益」って、なんのことでしょうか。簡単に言えば、日本企業が海外に進出して儲けている額のこと。そのままですね。  かつて、日本の製造業は国内でクルマや家電を作って、海外に輸出していました。が、今では海外の工場建設やM&A(合併・買収)が積極的。こうした各企業の行動が、日本経済の経常収支の数字となって現れているのです。  では「外国債券の利子などの証券投資収益」とはなんでしょうか。これは簡単、海外への投資で稼いだ額のことです。  つまり、日本経済はかつての「貿易による稼ぎ」から、「投資による稼ぎ」に切り替わっていたのです。以上、日本という国をひとつの企業として捉えた場合の“家計情報”を簡単に見てきました。  この国の将来への不安感が、少し薄れたのではないでしょうか?  安心して稼いで、安心してSupremeのバッグを買って、安心してハワイ旅行にも行ってくださいね。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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