政治家の無教養を後ろ指をさして笑っていても何も生まれない/鈴木涼美
あるいは、政治家の言い訳や、風俗店の言い逃れのような言葉のトリックが本当は意味がないのだという批評性をパロディ劇で表現したのかもしれない。パパ活であって売春のつもりはない、中韓について特集をしただけでヘイトスピーチのつもりはないという言い訳が、実質を見たときに何の意味もなさないように、政治家が次々に言葉のモザイクで保身に走るその不毛を自省的に振り返り、堂々と示した。そう深読みすらできる。
これらはすべて、バカらしい事態を嫌みな見方でほじくり返す私の憶測にすぎない。ただ、わかりきった政治家の無教養を後ろ指をさして笑う野党やリベラル知識人のしていることは、私の嫌みで無理やりな解釈よりさらに非生産的に思える。
それはシュレッダーを挟んで国会を空転させるような虚しさをもって、国民を絶望させるだろう。政治家が言葉を舐めくさり、その政治家を皆が舐めくさっているうちは、多くに嘲笑されながらも息の長い政権が、その息をさらに長くする気がしてならない。
※週刊SPA!2月4日発売号より’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中
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