「イランと戦争寸前のアメリカに正義はあるか?」佐藤優が考察
1月3日、イラクの首都バグダッドの国際空港でイランの精鋭部隊・革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らが米軍によって殺害されました。ソレイマニ氏が率いるコッズ部隊は、中東地域でイランの影響力を拡大するためにテロを含むさまざまな破壊活動に従事しています。
’19年12月、イラクで米国人が犠牲となった複数の事件がソレイマニ氏の指示によって行われたという証拠を米国は、スパイや通信傍受などによって掴んだのだと思います。「やられたらやり返す」というのが米国の論理です。
もっとも、ソレイマニ氏を殺害すればイランが激しく反発することは米国の外交やインテリジェンスの専門家はよくわかっていました。米国の保守派のイランに対する忌避反応はとても強いです。今年11月の大統領選挙を念頭に置いて米国の敵に対しては殺害を含む毅然たる対応をとったほうが内政的に有利になるとトランプ大統領は考えたのでしょう。
イランのハメネイ最高指導者は、1月3日に「ソレイマニ司令官とその他関係者の暗殺に手を染めた犯罪者らには、激しい報復が待ち受けている」(イラン政府が事実上運営するサイト「Pars Today」日本語版)と述べました。同月8日にイラクの米軍基地がイランからの十数発の弾道ミサイルによる攻撃を受けました。
しかし、米軍人の死者は出ませんでした。イランが攻撃を事前に米国に伝わるようにしていたからです。イラン指導部は、イランが米国に対して本格的な報復を行えば、米軍から攻撃を受けることは必至で、イスラム国家体制の崩壊に繋がることを冷静に認識しています。だから、深刻な事態には発展せず、日本も大きな影響は受けません。
★今週の教訓……「やられたらやり返す」が米国の論理です’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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