更新日:2023年05月23日 17:50
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「“初体験”を笑ってもらえたことが自信に」話題の作家・爪切男の素顔公開

いいタイミングで母には死んでほしい

爪切男――辛い出来事も美しい文章に昇華してきた爪さんですが、「これは今の自分には書けない」と感じることはありますか? 爪:やっぱり母親のことですね。イベントで笑い話にしたりはするけど、一つの物語として昇華することはまだできないです。再会はしても一つ屋根の下で暮らした経験はないし、僕はまだ母親という存在を全く理解できていない。  そんな人のことをいいように書いても、それはただの噓になってしまうので。でも作家としては、いつか母親のことをまとめて書きたいですね。「母亡き後、彼女と過ごした日々を振り返れば」みたいな自叙伝に憧れがあるので、いいタイミングで母親には死んでほしいと思います(笑)。 ――爪さんは文筆業以外にも、トークイベントやドラマに出演するといった活動もされていますよね。今後、どういう方向に進んでいきたいと思っていますか。 爪:Vシネに出たい(笑)。あとは昔、中島らもさんがやってたような、夜中の3時4時に変な大人がずっと面白いことを喋ってるラジオ番組。ああいう得にならない、でも眠れない夜を過ごしている人の救いになるようなこともやってみたいですね。 ――それは、作家という職業にこだわらず? 爪:いや、書き仕事は絶対にベースになきゃいけない。今って、いろんな媒体でくだらないことを書く人が減ってきてるじゃないですか。それこそ大槻ケンヂさんや掟ポルシェさん的な、馬鹿らしくて何のためにもならない、でもこの世には必要な文章。僕はそういうものを書く人でありたいんです。 「自分はこんな馬鹿なことばっかり考えて、なんてダメな人間なんだろう」って落ち込む子供がいたときに「でも爪切男もこの雑誌でこんなひどい連載持ってるし」っていうのが希望になるような……。キレイなものばかりが求められる世の中ですけど、それじゃあまりに息苦しい。  だから僕は懲りずにウンコや風俗の話を書いて、許されるギリギリのラインで闘っていきたいと思っています。売れたくてキレイな純愛小説とか書き始めたら、そのときは殴ってくださいね(笑)。 =====  インタビュー中、しきりに「僕は優しくなんかない」とつぶやいた爪氏。しかし、この愛すべきろくでなしが生み出す文章は、今日も世界を少しだけ優しくする。彼が何と言おうと、それだけは間違いないだろう。 ※3/3発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』より 【Kirio Tsume】 ’79年、香川県生まれ。文筆家。’16年より「日刊SPA!」で「タクシー×ハンター」を連載。同連載を大幅に加筆修正してまとめた私小説『死にたい夜にかぎって』を’18年に出版。’19年に文庫化、現在ドラマが放送中。週刊SPA!では「働きアリに花束を」を連載中 取材・文/餅井アンナ 撮影/江森丈晃
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