更新日:2020年03月30日 11:04
ライフ

「帰るか、離婚か?」家出するおじさんの胸中、密着ドキュメント

男特有の生きづらさが家出オジサンを生む

 警視庁の「平成30年における行方不明者の状況」によると、ここ10年間の行方不明者数は男性5万人台でほぼ横ばい。理由別では「病気」「家庭」「仕事」が全体の5割以上を占め、「病気」が急増している。
家出するオジサンの胸中

男女別に見ると男性5万6379人、女性3万1583人と男性が圧倒的に多い

家出するオジサンの胸中

うつ病や認知症などの「疾病関係」を理由に行方不明になる人が年々増加している

 恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美氏は「男性の行方不明者数は女性の約1.8倍。私の相談所でも、夫の家出に悩む妻からの相談は増えています」と話す。 「CASE1の水沢さんのようにギリギリまでストレスを溜め込み、爆発して家出はよくあるケース。また、子供に高望みする妻は教育費にお金をかけたがるので、『私が働かなかったら子供の塾代が足りない』『残業しても給与は上がらない』など、夫のプライドをへし折る言葉を平気で言います。CASE3の高野さん同様、妻のいる家に帰りたくない“帰宅拒否症候群”に陥って家出を繰り返す男性も少なくありません」  理想の高い女性と結婚した繊細な男性は、家出予備軍とも言える。対して「生きづらさと男性の家出は無関係とは言い切れない」とは、社会学者の筒井淳也氏だ。 「男性に“一家の大黒柱”を求める価値観が根強く残る日本では、稼がなければというプレッシャーが男性に重くのしかかっています。加えて近年、家事・育児も男性の役割という考え方が浸透してきた結果、自宅が“第二の職場”となり息苦しさを感じる男性も。さらに、“家”はお金があれば存続・機能するので、一度家庭不和に陥ると、妻にとって夫は厄介者に近い。関係修復力の低い男性だと、居場所を失い、その孤立感から家出に走ることもあるでしょうね」  家族に無断で家を空けるのは許されることではない。だが、「問題の根本的解決にはならないが、虐待やDVへの防御策や自身のガス抜きになるなら家出は最悪の選択肢でもない」と筒井氏は指摘。“心の自衛”によるオジサンの家出は、誰かを救ってもいるのだ。 【三松真由美氏】 恋人・夫婦仲相談所所長。コメンテーターとしても活躍。これまでに相談を受けた夫婦は数万組に及ぶ。著書に『モンスターワイフ』(講談社+α新書)など 【筒井淳也氏】 社会学者。立命館大学教授。家族社会学、ワーク・ライフ・バランスを主に研究。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)など 取材・文・撮影/谷口伸仁
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