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20世紀最後のボートレースダービーで勝負をかけた川崎智幸の壮絶な決着

<江戸川乞食のヤラれ日記S> =名勝負と呼べない名勝負?・6=  先日行われた令和2年(’20年)の平和島SG第55回ボートレースクラシックでは吉川昭男、坂口周、福来剛の3人がSG初優出を決め、中でも吉川は初準優、福来は初出場、初準優の快挙を達成した。  結果は残念ながら、吉川昭男の2着が最高位で初優出組には初優勝の栄冠は輝くことはなかった。
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20世紀最後のダービーは3周目までもつれた激戦に。川崎智幸を凌ぐ池上裕次
イラスト/ツキシモ(@Tsuki_Shimo111)

SG初優勝を多く輩出する総理杯とダービー

 実はSGの中で、総理大臣杯(現・ボートレースクラシック)とダービーこと全日本選手権競走(現・ボートレースダービー)は他のSG競走にくらべて、比較的SG初優出や、SG初優勝となる選手が多い。  例えば、上瀧和則、山崎智也、濱野谷憲吾、山室展弘、滝沢芳行、原田幸哉、魚谷智之、高橋勲、丸岡正典、仲口博崇、守田俊介、深川真二……。過去20年くらいの間で、これだけの選手がダービーでSG初優勝を決めている。  そして20世紀最後の年と当時はよく言われていた平成12年(’00年)の戸田競艇場で開催されたSG第47回全日本選手権競走もまた、地元埼玉の池上裕二のSG初優勝で幕を閉じたのだが、その池上の乗った優勝戦にはもう一人SG初優勝を目指して敗れた選手がいたのだ。  この年の戸田競艇場は前年度に続き2年連続でダービーが開催され、戦前は相変わらずベテラン選手vs植木や服部などの若手との対決に加え、前年優勝者でSG初優勝の山室展弘のダービー連覇やモーターボート記念優勝者の西島義則のSG連覇への期待が話題の中心であった。  そして、戸田競艇場の水面の特殊性ゆえに地元選手有利を謳う話題が中心であったが、実際にレースが始まるとその様相が大きく変化していた。  低調モーターを引いてしまった野中が前検練習での落水事故。初日にはその野中が事故の影響が出たのか、精彩に欠けたモーターに無理をさせた結果フライングによる早々の脱落。  前年の戸田ダービ優出3着の江口晃生は、当時の戸田の出走ピットの特殊性の影響をまともに受け、ピット出走後のホームで前ヅケに出ようとした艇と交差した際に接触して転覆。レースは再発走、江口は選手責任外の出遅れ扱いで早々と勝負権を失った。  他にも優勝候補と言われた選手の不調。  2日目以降もドリーム戦1号艇だった地元期待の後藤浩が、やはり上り調子の深川真二を巻き込む集団フライングに散るなど毎日のように事故レースが発生し、準優戦でも昨年覇者の山室展弘や、田中信一郎が転覆失格に散っていった。

昇り調子の川崎智幸、悲願のSG初優勝なるか?

平成12年(’00年)10月9日 SG第47回全日本選手権競走 12R 優勝戦 1 池上裕次 36歳 埼玉 A1 2 植木通彦 32歳 福岡 A1 3 安岐真人 55歳 香川 A1 4 川崎智幸 33歳 岡山 A1 5 高山秀則 51歳 宮崎 A1 6 服部幸男 29歳 静岡 A1 (年齢・級別は当時・県名は所属支部もしくは出身地) 「まさか池上が残るとはな。しかも優勝戦1枠とはさすが二代目戸田天皇」 「とはいえ埼玉の大御所栗原(栗原孝一郎)も言ってたけど、ここで勝てなきゃ池上は二度とSG取れねぇだろうな」 「そいうえば最後に埼玉の選手がSGとったのがその栗原で、しかも20年前(昭和55年・’80年)の話だな」 「地元の水面で1号艇。これで勝てなきゃどこで勝つ? って話だよな」 「確かに。でもSGのくせにメンツもG1なみに軽いし、今節は安岐も高山も予選道中で懲りたのかコースこだわらないみたいだしな、チャンスは充分ありそうだ」 「でもな、それを池上がプレッシャーに感じたら、たぶん戸田にも実績のある川崎のほうがおっかねぇだろうよ?」  優勝戦メンバーを見て、穴目好きの客の口から出てくる川崎智幸の名前。  ここまで平成8年(’96年)年5月の児島笹川賞競走(現・ボートレースオールスター)で、初出場初優出を果たし、その年の賞金王決定戦競走にも出走(得点率7位)この戸田優勝戦出走までの5年間で5回優出、そろそろSG覇者となってもおかしくないと言われていた。  同期の60期には烏野賢太、濱村芳宏、倉谷和信、上瀧和則と名だたる選手が並んでいるある意味黄金期の一人であり、当然のように川崎にも期待も高まっていた。 「なにより、予選も準優もレースが荒れまくったせいで誰が来てもおかしくねぇ、客もそう思ってらぁ」
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腕vs経験、20世紀最後のダービー王をめぐる死闘
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