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新発売のPS2がまさしく水の泡 ボートの客にはヒラもSGも一緒<江戸川乞食のヤラれ日記S>

<江戸川乞食のヤラれ日記S> =ここでは昔の話をしよう・2=  これはまだボートレースが競艇と言われていた時代の話。

記念も平場も関係ない。やってれば競艇場へ行くのが競艇客。

 競艇の開催名にはSGやG1など、いわゆるグレードのつかない開催は2種類あり、一つは冠名のつく「一般タイトル戦」と呼ばれる例えば新聞社の名前であったり、選手会や競走会、競艇場近所の飲食店や企業、競艇関係の雑誌などの名前を冠した開催がそれだ。  そして、もう一つは冠名すらつかない「ノンタイトル一般戦」が存在し、現在でもたまに開催されている。つまり、定められた賞金以外、一切副賞がつかない開催。それがノンタイトル一般戦である。  とはいえ、どれだけ仰々しい名称がついても、客の視点から言えばどちらも「ヒラ場」と呼ばれるA級選手のあっせんが少ない開催には変わりない。それゆえか、ノンタイトルの一般戦でありながら時としてあっせんメンバー、特にA1級には記念銘柄級の選手を単独であっせんすることも多く、開催タイトル名ではなく、選手の名前で集客をするような感じでメンバーをそろえていることが多い。  そして、それら記念級の選手が一般戦を中心に競走をしている選手に予選道中や優勝戦で負け、穴配当を提供する。そんな展開を期待して、一般戦に足を運んでいる客は自分も含めてかなり多い。

『競艇場 名前知らぬが 顔なじみ』

 古くから言われてる通りで、開催のたびに競艇場へ行くと必ずスタンドのどこかで見かけ、誰とはなしに声をかけあい取ったヤラれたなど、その場限りの話やレースのうんちくを語る。  この場にいれば、誰にも余計な詮索もされず、うそや大げさ、見栄をはってもそれを甘んじて受け入れ、あるいは話半分で聞き流してくれる『他人』の暖かさを感じることができる。かつての江戸川競艇場にはそんな空気が強くあった。 「おぅ、なんだ。まだ生きてたか!?」 「おめぇも案外しぶてぇな、あれか? ついに仕事クビにでもなったか?」  はたから見たらいきなりケンカのひとつも始まりそうな気配だが、これはある意味「こんにちはしばらく見なかったですがお元気ですか?」「おかげさまで、あなたもおかわりありませんね」という会話を翻訳しているに過ぎない。 「残念ながらクビにはなってないけど、ちょっと金が足りなくてな、朝から江戸川に金を下ろしにきてたんだよ」 「お前バカだろ!? 無駄に不定期預金の残高増やしにきやがって。で、金欠の理由ってなんだ?」 「ほら、明日PS2(プレイステーション2・2000年3月4日発売)の発売日だろ? それで金がちょっと足りなかったってわけさ」 「なるほどな。……で、今日はここまでいくらヤラれてる?」 「……本体にソフト代数本くらいかな?」 「いいから今から帰って定価で買えや……」 「でもほら。優勝戦のこのメンバーなら絶対穴になるって」 平成12年(’00年)3月3日 江戸川競艇場 一般戦競走 最終日 11R 優勝 1 酒井忠義 53歳 香川 A1 2 山根 強 52歳 広島 A1 3 林  貢 48歳 岡山 A1 4 村田孝雄 36歳 埼玉 A2 5 川原正明 26歳 石川 A2 6 西村秀樹 29歳 福岡 A2 (当時の江戸川競艇場は11R制・年齢・級別も当時・県名は所属支部) 「確かにこれはなぁ……。世間様は酒井=山根の一騎打ち風味みてぇだけどよ。記念を控えてる連中が、こんなところで小銭にがっつくかね?」 「誰だって金は欲しいさ。そういえば、前日コメントで山根がまくるとか言ってたな、確かにまくれるだけのアシはありそうなんだけどさ……」 「確かに予想屋連中もみんな、今日は山根はまくり一本だってわめいてたなぁ」 「うんうん。今日の水面はずっと絶好のまくり、まくり差し水面だから、そりゃ山根もまくりを打ちたくなるよな」 「いや待てよ。酒井って確か張り逃げ得意だったな……なるほどっ!」 「ああ。山根がまくりにいけば張りに出るのは間違いない!」 「確かに! それに、ここ数節江戸川の2コースからまともにまくりが決まってねぇしな」 「山根が不発なら内側二人は仲良く消えるって展開が有力だな」 「その展開ならアタマは誰だと思う? おっと、これを聞くのは野暮ってぇもんだな」 「まぁね。そこは走ってからのお楽しみってことで」
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ファンファーレが鳴るたびに喜怒哀楽
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