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波に乗ったら急成長、鬼のいぬ間にSG奪取 ’94年グラチャン・三角哲男<江戸川乞食のヤラれ日記S>

<江戸川乞食のヤラれ日記S>=名勝負と呼べない名勝負?・4=  平成6年(’94年)……この頃の競艇は、圧倒的強者数名と二番手を行く上位安定したベテランと、記念戦線で全国的に知名度をあげた若手たちに対し、過去1年で急成長著しい若手と復活の狼煙をあげた中堅やベテランの下剋上狙い、SG参加賞レベルのA1級選手を淘汰し、新たな記念戦線への台頭する選手の登場というような図式がSG競走のイメージであった。  しかし、そんな図式も、F禍や負傷による圧倒的強者や知名度をあげた若手の不在などが重なってしまったSG開催となるとどうなるか? イメージ的にはおそらく、先月の第66回ボートレースダービーに峰竜太が出ていない物足りなさ、を想像してもらうとわかりやすいかもしれない。  得てしてこういう開催は、新しいヒーローやスターが鮮烈にデビューすることが多く、今回も最後までノーマークから一気に頂点まで登り詰めた選手がいた。

大駒不在、若手上位不在の平成6年戦国グラチャン

 この年、平成6年(’94年)の住之江SG第4回グランドチャンピオン決定戦競走に関しては多くの客が先月のダービーに抱いたであろう物足りなさや違和感を持っていた。今ではその選考基準から「SGの中のSG」という称号を得ているグラチャンだが、設立当初は異論もあったのだ。  当時6つ目のSGではあったが、開催時期が笹川賞から1ヶ月ほどしか間隔があいておらず、フライングを切った時期によっては笹川賞には出られてもグラチャンはアウト、というパターンが散見していた。  また選考基準が客の目からみて不明な点も多く、口汚い客からは「誰かのSGグランドスラムの記録を塗りつぶすためだけにあわてて作ったんじゃないのか?」などという声も聞かれていた。  とはいえSGはお祭りみたいなもん、開催してればもちろん舟券は買う。むしろ大駒不在のSGのほうがこの先稼がせてもらえそうな選手を発掘しやすい、そんな目論見も客のほうにもあるわけだ。  この年の開催は、野中和夫、今村豊、長岡茂一、上瀧和則などの地元の総大将や住之江を得意水面としている若手強豪が不在となった開催となり、斡旋メンバーが確定した時点では、昨年第3回優勝の安岐真人の連覇か、第1回目のグラチャンを優勝し「グラチャン男」と称された、確かにSGの中でグラチャンだけはやたら活躍するイメージがついていた当時の関東のエース西田靖のグラチャン2回目の戴冠への期待で盛り上がりを見せ、大駒不在でも話題性にはこと欠かない開催という形ができあがった。  予選道中はやはりベテラン勢のコース取りの妙味と、当時から1コース勝率40%超えのイン有利な住之江水面でありながら、進入の乱れをついてまくりを決める若手との争いというレースが繰り広げられ、インが得意なはずの選手も1コース以外の位置から差しやまくり差しを決めるなどやはりA1級選手、例え予選突破率が低くてもSG常連選手を集めた開催であるグラチャン、ベテランも若手もひとつ上の「競艇」を展開していた。  果たして、終わってみれば初日ドリームメンバーのうち、準優に残れたのは植木通彦、中道善博、安岐真人の3人で、荘林幸輝、松井繁、西田靖は予選落ち。予選トップ通過は群馬42期の吉田稔がオール連対で名乗りをあげた。  当時からヤラれている競艇ファンならご存じかと思うが、吉田稔の42期生は「死に目の42期」などと言われ、今節予選落ちに終わったドリームメンバー荘林幸輝のSG優出19回で優勝はゼロという結果を筆頭に、誰一人SGをとれた選手がいないといういわくがあり、今度こそ42期選手のSG優勝か? というファンの期待が準優戦を前に盛り上がっていた。

ノーマークの恐ろしさ

平成6年(’94年)7月3日 SG第4回グランドチャンピオン決定戦競走 10R 準優勝戦 1 高山秀則 45歳 A1 宮崎 2 瀬尾達也 31歳 A1 徳島 3 三角哲男 27歳 A1 千葉 4 原田順一 44歳 A1 福岡 5 吉田隆義 28歳 A1 愛知 6 池上裕次 29歳 A1 埼玉 (年齢・級別は当時・県名は出身地) 「植木や上瀧に続く若手勢って言えばやっぱり埼玉の池上かな? 三角は名前の通り印も△止まりってイメージだな」 「何言ってやがる、去年多摩川の周年優勝してから別人じゃねぇのかってくれぇ罷り通ってるじゃねぇかよ、今年3月の総理杯でも優出してるし、そろそろ池上より三角がおっかねぇぞ」 「とはいえ三角の勝ち方が気に入らないんだよな。内田(内田和男・実況アナウンサー)が三角につけたあだ名が的確すぎてな」 「水上のゲリラだっけか、俺ぁ好きだぜ?」 「なんか、あいつが走るとレースが壊れる感じがしてな」 「そうか、あれはメンバーみてレースしてる結果だと思うぜ? 一緒に走る選手によって1マークの展開がどうなるか予測してコース取ってる気がする。だから変幻自在に見えるんだろ?」 「そりゃそうかも知れないけどさ」 「俺ぁ、相手が誰だろうと若けぇのに北原友次のマネしてインに固執して、結果スタートしくじりまくる誰かさんよりずっとマシだと思うぜ?」 「誰とは聞かないけど、それも確かに問題だけどよ」 「それによ、昨日勝負駆け日なのに2走とも住之江の月より遠い6コースに回されても1着2着をきっちり取ってくるくれぇには6コースからの勝ち方知ってるしな。今日は自在屋の強みがSG準優戦でも通用するかってのが楽しみなレースでもあるぜ」  結果は三角はコース取りに参加せず6コースへ、進入は内を狙う原田順一についてきた吉田隆義が3コースに入り145263。  コンマ01のトップスタートを切った瀬尾と池上が高山をまくり、高山がそのまくりに飛びついた内側を大外6コースから三角がまくり差しを決め1着、2周1マークで瀬尾をさばききった高山が2着を確保して優出を決めた。 結果 連単 3-1 2470円 12番人気 決まり手:(まくり)差し (当時の決まり手は、まくり差しも差しとして発表していた) 「いやぁ、三角すげぇわ。これで昨日含めて3走連続6コースから走って2勝2着1本だぜ?」 「まだ若いからコース主張できないってのもあるだろうけど、最初から枠番主張もしないで6コース回るってのはやっぱり納得いかないなぁ」 「外からの勝ち方知ってりゃ、内からだって楽に勝てるってことよ。でもいずれは自在屋ってのも下手したら死語になりそうな気もするけどな」  続く11Rは地元の2号艇井上利明が、場内の客もどよめく1号艇林通をどかして1コース奪取からトップスタートを切っての逃げを決め、2着は道中石田栄章と競り合った林通が突き放し2着。  12Rは4コースからインを取りきった立山一馬が2号艇中道善博のツケマイをはじき返して押し切り、2着はその中道と5コースまで追いやられた1号艇吉田稔がまくり差しからの中道とのもつれにもつれた競り合いから2周2マーク、ターンをゆるめた中道にダンプを決め決着をつけ、優勝戦にドリームメンバーが誰も残れないという結果になった。
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二度あることは三角(?)ある、三角があれば四度目も?
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