更新日:2023年05月24日 15:51
カーライフ

フェラーリでいえばファントムは512BB、F-2はF355…フェラーリ教教祖、戦闘機カメラマンになる

 自分はカーマニアだが、別にクルマの整備ができるわけではなく、できることは運転と洗車くらい。このままでは年を重ねるごとにやることがなくなる……という危機感を抱いていたところ、たまたま本屋で『カメラはじめます!』(こいしゆうか著 サンクチュアリ出版)という本を見かけ、「オレもカメラを始めよう!」と思い立った。

『カメラはじめます!』とAmazonで買った中古カメラ

「カメラは別に新品である必要はない」との本の教えに基づいて、AmazonでキヤノンEOS kiss(一眼レフ)の中古を購入。ダブルズームキットで価格は2万5000円ほどだった。クルマに比べたら夢のように安い。  さらに教えに基づいて、単焦点レンズも2本購入。こっちは1本1万円ほどしたが、それでも合計4万5000円で、それらしい装備が揃った。

最初の被写体は近所の公園で発見。オレは蛇口カメラマンになる!

 さっそく被写体を求めて、近所の公園に出撃。ふと目にとまった水道の蛇口を撮ったところ、なんだか心にグッと来た。蛇口には人の気配がある。そこにはぬくもりがある! それに、わざわざ蛇口を撮った写真ってあんまり見たことない。そうだ、オレは蛇口カメラマンになろう! 老後は全国の蛇口を撮って歩こう!

中古一眼レフで撮影した近所の公園の蛇口

 とは思ったものの、蛇口ばっかり撮ってても、あんまりウケないし楽しくない。カーマニアなのでクルマも撮ってみたが、自動車カメラマンはいっぱいいるし、仕事の延長っぽくてあまり燃えない。  そうだ、戦闘機を撮りに行こう!  昨年暮れ、茨城県百里基地のF-4ファントム戦闘機が退役間近ということで、見学に行ったのだが、あの時はまだ一眼レフは持っておらず、ちっこいデジカメで撮影に四苦八苦した。しかし今はズームレンズ付きの一眼レフがある! 百里基地には、3月末からファントムに替わってF-2戦闘機が駐屯しているらしいから、それを撮りに行こう! ワクワク。 (※取材に訪れたのは緊急事態宣言が出る前です。現在は不要不急の外出は避けてください)

動かない蛇口と違って戦闘機撮影は難しい!

 朝6時に家を出て、茨城へ向かう。快晴、ほぼ無風。戦闘機ウォッチにはもってこいだ。スマホの天気予報では弱い南風となっているので、訓練の解禁時間である午前8時半、滑走路北側のポイントで、他の基地から飛来するかもしれない機の着陸を待つ。  が、飛来する機はなかった。ならば9時半あたりからの離陸を狙おうと、空港南側のポイントに移動。折り畳み椅子に座ってのんびり待つ。実にのどかだ。周囲にはマニア氏のクルマが数台。彼らの動きを見てマネすれば間違いない。

平日にもかかわらず、戦闘機マニアが集合

 9時半頃、ジェットエンジンの音が響いてきた。マニア氏たちがいっせいにクルマから降り、カメラを構える。私も慌ててカメラを構えた。俺の望遠レンズが初めて火を吹くぜ!  が、なにせ望遠レンズを使うのは初めて。カメラの設定もよくわからない。動くものを撮るんだからシャッタースピード優先か。シャッタースピードはどれくらいがいいのか? 何も予習してこなかったが、初心者なので速いほうがよかろうと、とりあえず500分の1秒にセット。あとはフルオートで撮る。  轟音とともに戦闘機が離陸し、こっちに向かって来た。轟音といってもファントムよりはかなり静かだ。新しい戦闘機は環境にも優しいようだ。うおおおお! 撮るべし!撮るべし!撮るべし!

摂るべし!撮るべし!撮るべし!

 が、250ミリ(最大限)にセットした激安ズームレンズの焦点が合わない! 焦点が合わない以前に戦闘機がファインダーに捉えられない! ヤバイ! 急遽ズームをグイッと回して55ミリに縮め、戦闘機を捉えてからズームを拡大しつつシャッターを押した。連射連射! デジカメなので何枚撮ってもタダ! シャッターを押し続けろ!  初めて見るF-2は、やっぱりメチャメチャカッコいい! 特に旋回姿勢にシビレる。ファントムと比べると2世代くらい新しいだけに、すべてが現代的に見える。  が、写真の上がりを見ると、どれもこれもピントが甘い! 全部失敗! ヒエ~! 構えが甘くて手ブレしたのか? 今度はレンズの先の方を支えて持ってみよう。

中古一眼レフで撮影したF-2 戦闘機。これはうまく撮れたほうです

 連続してF-2が離陸する。都合4機がテイクオフ! ひらすらシャッターを押したがほとんど失敗! ガックリ。やっぱり激安中古カメラじゃダメなのか? いや、そんなはずはない。オレが下手なだけだろう。  戦闘機は、訓練で離陸したら1時間くらいで戻るはず。今度は着陸を狙うべく、滑走路の北側に移動して待つ。  前回ウォッチしたポイントから、散歩がてら数分移動してみると、小高い丘の上にマニア氏たちが陣取っていた。これは爆風除けの土堤の跡だろうか。登ってみると、うおおおお眺めがイイ! こんな絶好のポイントがあったのかあ!  最前列には主のような顔をしたオッサンが望遠をぶらさげ、鋭い視線を走らせている。ここにもヒエラルキー的なものがあるようだ。とにかく自分のカメラ&レンズが一番ショボいことだけは瞬時に理解。さっきはシャッタースピード500分の1でダメだったので、640分の1に変更し、無言のヒエラルキーの最下層として、最後方に構える。

とにかく連射しまくりました!

 10時半頃、轟音とともにF-2が帰ってきた! 離陸に比べると着陸は速度がやや遅くて狙いやすい気がする。オレの激安高射砲で撃ち落としてやるぜ!の気概で連射しまくる。  ファントムとF-2とでは着陸姿勢がまるで違う。ファントムはグンと機首を持ち上げて、大きな迎え角で着陸していたが、F-2は翼面荷重が小さく離着陸性能がいいので、機首をほとんど持ち上げず、滑走路にノーズから突っ込むようにアプローチしている。

前回撮影した偵察機型のRF4ファントム

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戦闘機をスーパーカーにたとえると……
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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