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国に納めた税金、使いみちに文句をいうと叩かれる風潮について/鴻上尚史

僕たちは国に年貢を“差し上げている”のか?

 思わず僕は、「年貢と税金は違う」とツイートしました。「税金は、公共財、公共サービスを受けるために国に払っているもので、苦しい時には自分達のために使うことを求めるのは当たり前です。でも、年貢は違います。年貢はお上に差し上げるものです。見返りはありません。年貢とはそういうものです。日本人は、税金ではなくて、年貢を払っていると思っているんじゃないでしょうか」なんて内容です。  税金の使い方に関しては、僕は、自民党政権だろうが民主党政権だろうが、文句を言います。それが、税金を払っている人間の当然の権利だと思うからです。  中止したイベント・演劇・スポーツに対して、なんらかの補償をして欲しいと思いました。  けれど、政府は業界に対してなんの反応もありませんでした。  やがて、社会全体に自粛を求めるのなら、国民に休業補償を出して欲しいと思いました。  文化を守って欲しいというレベルから、生活を守って欲しいというレベルに移ったのです。  だからと言って、文化を守らなくてもいいと思っているわけではありません。  ヨーロッパの国々から「休業中の給料を80%補償する」とか「全額補償する」とかのニュースが飛び込んできて、「日本も、自粛を要請するなら、休業補償とセットで」と声が上がり始めました。僕もツイッターで書きました。 「金が欲しいだけなんだろ」と、またメンションが来ました。「そんな金がどこにあるんだ?」なんて反応もきました。この人は、務めている会社が赤字になったら、給料が欲しいという同僚に「そんな金がどこにあるんだ?」と言う人なんだろうかと思います。そんな金を作るために、ヨーロッパではドイツをはじめ均衡財政を取りやめる国がでてきています。今、この国民の危機を救うための方法です。この違いはなんだろうかと思います。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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