国に納めた税金、使いみちに文句をいうと叩かれる風潮について/鴻上尚史
国に納めた税金、使いみちに文句をいうと叩かれる風潮について
ぴあ総研のデータによると、2月の終りからの一カ月で、中止または延期したライブイベントは、81000本、入場できなかった観客は5800万人、売り上げの損失は1750億円と言われいます。
さらに5月末まで続けば、中止は72000本で計153000本。入場できない観客は、5100万人で計1億900万人。損失は、1550億円増えて、計3300億円になるという計算です。
金額が莫大なのは、ライブイベントは、自粛でお客が何割か減るという業種ではなく、公演するか中止するかしか選択肢がないからです。
というデータをツイッターに書いたら「国から金をもらいたいのか?」「演劇だけが特別だと思っているのか?」「お前達はこじきか?」というメンションをいろいろもらいました。
まあ、こんな時期ですから、誰もがムシャクシャしています。
名前が知られている奴がなんか書いていたらとりあえずたたいてやろうと思うのは、人間のひとつの本能かもしれません。
僕は昔、早稲田大学の学生の頃、それなりに劇団にお客さんが入り自分の名前が売れた時に、学内のミニコミ誌でボロクソ書かれたことがありました。どう考えてもイチャモンとしか思えませんでした。
その時、「有名になるということは、何も悪いことをしていなくても悪口を言われることなんだなあ」と思いました。
なので、売れていること、名前があることが許せないという動機は分かります(もちろん、悪口自体には傷つきますが)。
でも、もし確固たる信念で「国にたかるんじゃないよ」と思っている人がいたら、どんなメンタリティなんだろうと不思議になるのです。
政治的信念の人は別ですよ。
「苦しい時に国に文句を言うんじゃない」と書いている人が、民主党政権時代、東日本大震災の時には、ちゃんと国に文句を言っていたとしたら、「国に文句を言うんじゃない」ではなくて「自民党政権に文句を言うんじゃない」ですから、これは理解できます。
そうではなくて、「とにかく国のすることには文句を言ってはいけない。国に頼ってはいけない」と、どんな政権の時にも思っている人の思考・信念が分からないのです。
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