現実に格闘するブレイディさん親子の日常が感動的な理由/鴻上尚史
現実に格闘するブレイディさん親子の日常が感動的な理由
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)が話題のブレイディみかこさんと対談しました。NHKのEテレの『スイッチインタビュー達人達』という番組です。
対談の前に本を読んだのですが、実に興味深く感動的でした。内容はブレイディさんと息子さんの実話というか、毎日の生活です。
息子さんは、イギリスの「元・底辺中学校」に通い、そこでさまざまな人と出会います。
友達だと思ったのに人種差別丸出しの発言をするクラスメイトや、貧しさに苦しむクラスメイト等々。
貧困と差別に直面しながら、ひとつひとつ、「なんとかしよう」と取り組む息子さんとブレイディさん、そして夫の生活が感動的でした。
こういう本が、ベストセラーになる現状は、ひとつの希望だと思います。
ここしばらく、暗いニュースと哀しくなる出来事と分断を煽るネットの発言に接していると、だんだん、「この国、アカンなあ」なんて思う時もあるのですが、なかなかどうして、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がベストセラーを驀進している現状を見ると、「みんな、探してるんだな。あきらめてないんだな」という気持ちになります。
僕が一番、印象に残ったのは、「sympathy(シンパシー)」と「empathy(エンパシー)」は違う、ということでした。
「シンパシー」とは「同情する気持ち」「共感する気持ち」ですね。
「エンパシー」は「共感する能力」「感情移入する能力」のことです。
で、普通は「可哀相な人に同情しましょう」「貧しい人に優しさを」と、「シンパシー」が強調されがちなんだけど、より大切なのは「エンパシー」の方だと、ブレイディさんは言います。
「エンパシー」は、可哀相だと思う気持ちではなく、可哀相だと思える能力のことです。ただ同情することではなく、同情できる能力です。
それを自覚し、養うことが大切だと、ブレイディさんの息子さんは学校で習うのです。
「ちゃんとした市民になるための」授業の一貫として受けるのですが、これはもうすごいことです。日本の道徳の授業となんと違うことか。
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