元男性を愛した男たちの「俺はここに惹かれた!」
では逆の立場、元男性を愛した男たちは、彼女たちのどんな部分に惹かれたのか? 経験者が語るリアルな声に耳を傾けてみた。
●佐藤勝利さん(仮名・32歳)……若くして新宿二丁目に入り浸り、ひと通り経験した生粋の性の探究者。最近、中折れ気味。「リアルタイムでどんどんキレイな女性に進化していく」
●岸本裕介さん(仮名・46歳)……性別や年齢を超えた愛を持つパンセクシュアルの情報誌編集者。メスイキにも開眼中。「中性的で重層的なあえぎ声には独特の色気がある」
●山田洋一さん(仮名・39歳)……1年前に、ニューハーフ童貞を卒業。以来、気になる美女がニューハーフに見えるのが悩み。「不確かで不完全。だからこそ、愛が芽生える」
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佐藤:僕が付き合ったのは25歳のとき。当時、ニューハーフや女装子が集まるイベントがあって、好奇心で覗いてみたら、すごくレベルが高くて、まずカルチャーショックを受けました。
岸本:ニューハーフのコって、女性に近づきたい思いがあるから、美容やファッションへの意識が高いよね。単純にお洒落だし、メイクもうまい。しぐさも女性らしくて、清潔感があるんだよなあ。
山田:背も高いから、一緒に歩いているとモデルと付き合っているような気分になりますよね。
佐藤:本人は背が高いのがコンプレックスだったりするからヒールを履きたがらないけど、逆にがっつり履いてほしい。それが彼女たちならではの魅力でもあるから。
山田:あと、彼女たちと接して思うのが、学歴とかじゃなくてインテリジェンスが高いコが多い。
岸本:やっぱり物心ついたときから簡単には答えの出ない悩みと向き合っているので、考える習慣が身についているし、社会への問題意識も高い。
佐藤:しかも、それをひけらかさないし、基本的に奥手ですよね。自分が付き合ったコは引きこもり気質だったから、デートに連れ出すのが楽しかった。
山田:いわゆる“おかまキャラ”って、処世術の面が強いから鵜呑みにしちゃいけない。本質はすごく繊細だし、こっちが女性として接すると、どんどんかわいい一面を見せてくれる。
佐藤:まさにその通りで、付き合っているうちに、脱毛やホルモン治療なんかで、どんどん女性としてキレイになっていくんですよ。
岸本:あと、セックスのときのあえぎ声。初めて聞いたときは衝撃だったなあ。地声が出るから、ちょっと野太かったりするのかなと思いきや、ほとんど女性のあえぎ声だから! むしろ、若干の中性っぽさもあり、重層的で独特の色気があるくらい(笑)。
佐藤:そうですね。基本的には女性として見ているのだけれど、ふと中性っぽさが垣間見えたとき、自分のセクシュアリティが揺らぐ瞬間がある。それがなんだか心地いいんです。
岸本:結局、ノンケなんて思い込みにすぎないから。セクシュアリティはグラデーションで、出会いによって初めて気づくこともある。
山田:不確かで不完全な人間同士が、お互いを認め合う。愛ってそういうものじゃないですか。
佐藤:そういうとすごくキレイですけど、はたから見たらおっさん同士が乳繰り合ってるように見えるのかも……。
山田:別にどう見えようと構わないけど、それより問題なのが、好きになるほど「もしかして元男性だからこそ、俺は彼女を愛しているんじゃないか?」と自問自答してしまうこと。だって、彼女たちは女性として愛されたいわけだから、それは傷つけることになるでしょ。
岸本:その辺の悩みは尽きないよ。例えば、ニューハーフのコの男性器を「ペニクリ」っていうけど、あるとき当事者に「なんでそう呼ぶんですか?」と言われて答えに窮したもん。で、結論が「男の気遣いの結晶」だと(笑)。ペニスじゃなくてクリトリスという。
佐藤:まあ、そうやって自問自答しながら彼女と自分の結びつき方を模索していくときこそ、「あ、俺生きてるな」って実感があったりするんですけどね。
山田:なんか初めて女性と付き合ったときの青春時代の感覚が甦って、気持ちが若返るよね(笑)。
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/外舘翔太 ヘアメイク/清水智也>