見た目は女性の「男の娘」など、多様性の時代にあって、性別を超えた魅力と愛の形が社会に浸透しつつある。元男性と付き合う男たちが、“彼女”を愛する理由とは? MtF(Male to Female/戸籍上の性別は男性だけれど、自分のことを女性と認識している方)とその交際中の方々を取材、“ジェンダーレス時代”の愛と性を探る。
かえでさん(左)と、いおりさん
元男性の彼女が語る「私たちの恋愛事情」
いおりさん(34歳)とかえでさん(26歳)。外見は完全に女性の2人はどんな恋愛をしてきたのか、赤裸々に語ってもらった。
――お二人がこれまでにお付き合いした男性は何人くらいですか?
いおり:付き合ったのは6人。ワンナイトの人を含めると15人くらいだけど、匂いや肌のフィット感が合わないと続かないかも。
かえで:私は長く付き合ったのは2人だけ。経験は6人くらい。やっぱり付き合うってなると、お互い感覚がマッチしたり、信頼関係が必要だから難しいよね。
――男性とはどんなところで知り合うのでしょう?
いおり:私はずっと昼はアパレルをやっていて、夜もクラブで働いたりだけど、付き合うのは昼間の仕事関係が多いかも。私たちって働ける場所が限られていて、だいたい美容やファッションか、プログラマーみたいに手に職を持ってる仕事か、夜の仕事。だって、どんなに外見が女性に近くても、履歴書を見れば性別がバレちゃう。
かえで:私は18歳からずっとショーパブやクラブで働いていて、そこでの出会いが中心。銀座だったり、歌舞伎町だったり。性適合手術には200万~300万円くらいかかるし、それ以外でも女性に近づくために何かとお金がかかるので、専業やかけ持ちで夜のお仕事をする人は多いですね。
――付き合うときは感覚が大事とのことですが。
いおり:まず最初に、「この人ベッドで嫌なことするだろうな」っていう人には絶対にいかない。
かえで:わかる! 「男の気持ちもわかってくれるだろう」みたいに勘違いしてる人も。
いおり:男の気持ちがわかるなら、こんな格好してないし!
かえで:そんな都合のいい話はない(笑)。あと、ニューハーフばかり好きな「トラニーチェイサー(※トランスジェンダーを追いかける人)」をアピールされると、心がぱたっと閉まっちゃう。
いおり:だから、私は相手が自分を好きになるまで、カミングアウトしない。今まで関係を持った人は、全員がニューハーフ初体験。
かえで:童貞キラーだ(笑)。
――でも、いざ肌を重ねるとなったら、わかるわけですよね。
かえで:そこで態度が変わる人とは、こっちもそういう関係にもっていこうとしないんじゃないかな、無意識に。
――じゃあ、そのままセックスできてしまう?
いおり:私たちのセックスは全部アナルセックスだと勘違いしている人もいるけど、積極的にしたい人はそんなに多くないと思う。私もそっちは未経験だし。そもそも下半身はすごく繊細だから、私は彼氏にも見せたことない。ずっとシーツで隠してる。
かえで:手術後かどうかの違いもあるけれど、どんな状態であれ、すすんで自分から見せたいものではないわね。
いおり:たまに「君のすべてを愛したいんだ!」ってシーツをはぎ取ろうとする人がいるけど最悪!
かえで:そういう男ほど、気にしない自分に酔っているだけね。私たちのセックスって、気持ちがすごく大切。肌から伝わるぬくもりと愛情だけでも、女性としての幸せを感じるし、お互いを愛し合える。
いおり:そうそう。だから、今まで言ったようなことをわかって愛してくれるなら、外見とか年齢とかはあまり気にしないかな。私たちって夜の仕事のイメージが強いかもしれないけど、本当は物静かな普通の暮らしと幸せを望んでいる人がほとんどだから。