エンタメ

『愛の不時着』が自粛期間中の辛い気持ちを救ってくれた/鴻上尚史

読書と書き仕事と寝る前に見る『愛の不時着』

 それでも、嘆いているだけではなく、働かなければいけませんでした。 『虚構の劇団』の場合は、サードステージという僕が社長をしている零細制作会社が制作元なので、中止の負債をなんとかしないといけないからです。 『スクールオブロック』は、ホリプロさんの制作で、僕は翻訳・演出家として雇われた立場ですから、興行そのものに対する経済的責任はありません。その分、ホリプロさんは大変だと思います。 「自粛要請には休業補償を」と演劇界や音楽界は言い続けてきましたが、そして、それは一部、ネットでは激しい反発・攻撃を受けましたが、政府は過去の公演に関しては、何の補償もするつもりはないようです。  2月26日から自粛が始まり、6月中旬の現段階で過去の中止公演に対する純粋の補償の予定はないようですから、これが政府決定なのでしょう。  5月6月に続いて、『スクールオブロック』が中止になったので、8月の下旬まで、いきなり時間ができてしまいました。演劇の場合は、やるかやらないかなので、スケジュールが何割減になる、ということではないのです。  こんなに時間ができたのは、何十年ぶりだと思います。  なにもしなければ、頭がおかしくなってしまいそうですが、なんというか、働かないと経済的に立ち行かなくなるので、いろいろと仕事を見つけようと思っています。  ラッキーだったのは、僕が演出家専業ではなく、作家も兼ねているということです。自粛中でも、稽古が全部なくなっても、作家としての仕事はなんとかゲットできます。  昼間は、公園で本を読んで気を紛らわせ、夜、書き仕事をして、寝る前に、ずっとNetflixの韓国ドラマ『愛の不時着』を見ていました。暗い気持ちになりそうな毎日を、『愛の不時着』がどれほど救ってくれたか。韓国の大財閥のお嬢さんが、パラグライダーの事故で北朝鮮に不時着し、そこでイケメンの軍人と出会う。二人の美しいこと。深刻な話なのに笑えること。 「北朝鮮が16日、開城の南北共同連絡事務所を爆破した」というニュースが入ってきました。『愛の不時着』を見た後だと、余計、哀しみが胸を突き刺します。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
1
2
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート