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<純烈物語>無観客ライブでも熱い。見えないファンと握手して回った純烈の想い<第53回>

4人が表現したもの

 4人が表現したのは自分たちのパフォーマンスだけでなく、受け手の存在も現場に宿らせたのだ。報道でこれらは「エア握手」「エア汗拭き」とされたが、相手がいなくとも成立させるという意味ではもっと違う何かのような気がした。  プロレスの世界には、透明人間がれっきとして存在する。対戦相手の動きや、現場で流される実況によって見えないものが見えてくる(参考:透明人間vs透明人間のプロレス)。  ただラウンドの場合、それだけを延々と続けていては映像として変わり映えがしない。曲が進むにつれて、小田井が持ち前の小芝居力をいかんなく発揮してきた。 純烈大江戸3 イスの背もたれには穴が開いており、それを手にすると観光地にある顔だけ繰り抜かれているパネルよろしく扱い、報道陣の笑いを取る。一番疲れているはずなのに、誰よりも小ネタをはさんでくるあたりは性分としか言いようがない。  また、白川はたとえ“エア”であっても贈り物を受け取り、いっぱいになるとスタッフに手渡す。自分たちで止めたのに風が出ていないクーラーまでいって涼んでみたり、イスの上にある座布団を飛ばしたり……その場その場のアドリブで、4人はラウンドを成立させた。  さらに後方ブースまで来ると、マスコミとも一人ずつ握手(あるいは拳タッチ)を交わす。すでに場内は取材の雰囲気ではなくなっていた。4人のパフォーマンスに惹き込まれ、仕事抜きでハッピーを味わっていたからだ。  無観客ライブではあるが、純烈はその場にいる報道陣をオーディエンスと見立てることでハッピーな空間を現出させていた。おそらくこの空気感は、映像で見ても伝わるはず。  DVD作品は、動画によってその場で何があったかを伝えるものだが、純烈ならば雰囲気や臨場感もファンに味わってほしいと願うはず。通常ライブよりも報道陣との距離を近づけることでそれを描いてしまうあたり、パフォーマンスに対する絶対的な自信を見た。  握手を交わすと、すぐにスタッフが飛んできてマスコミの手へ消毒液をかける。ハッピーがちゃんとハッピーとして成立するためのやるべきことをやっていた。 「たとえ収束して有観客のイベントが増えてきても、純烈は最後に再開ってなるんだと思うんです。やはりウチのお客さんは年齢層が高いから、コロナに関してはほか以上に注意を払わなければならない。  じゃあ人数を減らしてソーシャルディスタンスを取って、ラウンドもやらないようにしてやれば……っていう声があるのもわかっているけど、俺自身はやるとしたらワクチンとかができて密になっても安心という状況でやりたい。だってさ、俺らはおばちゃんたちとふれあうことでここまで来られたわけだし、ラウンドをやらなかったら熱量だって違ってくる。純烈のライブを、純烈のライブの形でやれる日が来るまでは我慢だよね」  酒井からそんな言葉を聞いていたので、消毒液さえもネタとして利用する姿の裏側にあるであろう気持ちを察した。「本当だったら、こんなものに頼らなくとも楽しめるのが一番いいんだよ」という心の声を疲労がにじむ笑顔で隠し、試練と実験が同居したラウンドを終えたのだった。 撮影/ヤナガワゴーッ!(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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