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<純烈物語>無観客ライブでも熱い。見えないファンと握手して回った純烈の想い<第53回>

純烈ライブへようこそ!

「お久しぶりです。純烈ライブへようこそ!」  オープニング曲を終えると、後上翔太が笑顔で叫んだ。すでに歌っている最中から小田井涼平は無人の客席へ手を振っている。 「お客さんがいるというイメージでやらないと成立しませんから」  MCに入り、いつも通りの会話が繰り広げられる中で小田井が言う。オーディエンス不在の中で歌うこと自体はこれまでの番組出演で経験しているし、そもそもレコーディング等ではそれが普通だ。  だから、観客がいる“設定”で物事を進めることが非日常となる。2曲目の『プロポーズ』が終わると、1年前のNHKホール単独公演で一度は純烈若返りのために解雇された経験を持つ2人(バックナンバー第7回参照)が泣きを入れた。 「フルコース、シンドいわー」(酒井) 「もう帰りたいです。ヒザがガクッ」(小田井)  特に小田井は大粒の汗を流し、すでに顔がビショビショ状態。手渡されたタオルは、そのまま舞台袖にかけ常備された。返し(ステージ上のスピーカー)の手前には消毒液のボトルが置かれ、MC中に酒井がそれを噴きかけつつ、メンバーに「この10年で何が一番楽しかったですか?」とお題を振る。 純烈大江戸2「健康センター、スーパー銭湯のライブじゃないですか。お客さんがお座敷に座っていらっしゃって、我々も靴を脱いで客席に降りていって握手をしたりとか。ステージの本番中に靴を脱ぐ歌手ってあまりいないと思うんですよ。そういう純烈文化みたいなものを育んだ場所ですよね」(後上) 「嬉しかったことはベタかもしれんけどデビューが決まった時ね。紆余曲折あった2年間で、やっと決まった。ヘタしたらできなかったかもしれない。あそこでデビューしていなかったら今、純烈じゃないかもしれないしね」(小田井) 「『幸福遊び』で初めて演歌歌謡チャート1位を獲らせていただいたこと。あれは嬉しかったですねえ」(白川)  10年目のデビュー記念日だからこそにじみ出る思い……その場では共有できず、届けるまで多少の時間はかかってしまうが、それでも3人の言葉を聞いて、顔を見た時にやはりこのライブはやるべきものだったのだと確信した。そして、いよいよラウンドへと突入していく。  メインボーカル・白川以外の3人も、持ち曲を歌う間、それは続けられた。つまり4曲分もの間、無人の客席を練り歩いたのだ。  オーディエンスのリアクションがあればなんら問題ないが、それ抜きで本人たちの間が持つのか。ここが無観客ライブのヤマ場と言えた。  そこにファンがいることを想定し、一席ずつ笑顔を浮かべながら手を差し出す4人。握り返されたと思われるタイミングで、一言ひとこと何やら言葉を投げかける。  コロナ前の変わらぬ風景。不思議なことに、メンバーの表情と仕草によって、そこにいないはずの観客一人ひとりの高揚した表情や、握手のさいにこもる歓喜の力のようなものが輪郭となって浮かんできた。
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4人が表現したもの
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