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痔ろうが辛い男、女性用ナプキンと出会う「漏れても大丈夫」の安心感がすごい

ガーゼや医療用テープではガードできない、血が漏れる苦しみ……

 どのくらいの苦痛が今後待っているかわからないため、病院を出てすぐにドラッグストアへ向かい、ガーゼや医療用テープに加え、食料を買いだめする。  麻酔が効いていたのか、帰宅するまで一切痛みを感じなかったのだが、家に帰ってパンツを脱ぐと……見慣れない赤黒い色が。  おそらく、少し長めに歩いたせいでガーゼがズレて血がパンツに付着してしまったのだろう。パンツの処理もそうだが、これが何か月続くのかと考えると気が重くなる。  肛門周囲膿瘍になってみてわかったことは、痛みよりも不快感のほうが強いことだ。痛み自体はキツいものの、切り傷なのでガマンできないほどではない。しかし、「いつ痛みが来るかわからない」というプレッシャーと、ふとした瞬間に血と膿が出ることで下半身にドロっとした感覚がある不快感が気力を削いでいくのがつらかった。そのため、原稿は寝転がったままノートパソコンで書いていた。  しかし、打ち合わせや取材で外出せざるを得ない日もある。10分程度ならまだいいが、30分も歩けばガーゼは気付かぬうちにズレていくうえ、横になっているよりも多く血が出ている気がする。もちろん取材中に「ちょっと失礼」とトイレに行くわけにもいかず、取材が長引けばガーゼは血まみれになり、パンツにまで血が浸食する。  どうやら、ガーゼだけで出血を防ぎきるのは無理があるらしい。そこで私は、恥じらいを感じながらも女性用のナプキンを装着することにした女性の生理による出血は1日100cc前後らしい。そこまでは出血していないだろうから、きっとカバーしきれるだろう。
ソフィのナプキン

血が漏れたら嫌なので大きいのを買った

 ドラッグストアで買ったのは「ソフィSPORTS 多い夜用 羽つき30㎝」。とはいえ、ナプキンの付け方なんかわからない。どちらが後ろでどちらが前なのかもよくわからないまま、見よう見まねでナプキンをパンツに貼り付ける。  なんとなくゴワゴワした感覚があり落ち着かないものの、「漏れても大丈夫」という安心感は何にも代えがたかった。実際、ナプキンを着けてからはパンツを汚すこともなくなったため、「血まみれのパンツを自分で洗う」という屈辱も受けることがなくなったので、気力の低下もある程度抑えられた。  しかし、「下半身から断続的に出血している」というのは本当に大変なことだ。生理では自分よりも多くの出血があるケースも多いだろうから、ナプキン1枚では足りないこともあるだろう。そして生理痛やPMSなどの肉体的、精神的デメリットがあるにもかかわらず、それを人に悟られないようふるまうというのは、並大抵のことではない。「痔になって何もやる気がしないんです。もう本当無理です」と編集者に泣きついていた自分とは大違いだ。

女性の苦しみを、図らずも痔ろうによって知る

 また、ナプキンは装着時以外でも苦悩することがあった。誰のゴミか特定されることはないだろうが、同じマンションの人たちになんとなく見られたくもなかったので、使用済みのナプキンを紙とコンビニ袋でくるんでからゴミ箱に。  気力が萎えているときこそこういう細かい作業はしんどいのだが、生理痛に耐えながらも処理をしている女性には頭が下がる。  そして、初めてナプキンをつけてから1週間ほどで再診を受けたところ、経過は良好との診断を受けた。穴を維持するためのガーゼを外し、今は穴を塞いでいる最中だが、出血もほとんどなく短時間であれば自転車にも乗れるようになった。だが、下痢や便秘を契機に再発する可能性が残っているらしく、辛いものや脂っこいものをスルーし続け、毎日ヨーグルトを食べるなど、恐怖の影は常につきまとっている。  もちろん、自分が生理の辛さを完全に理解したとは全く思っていないが、それでも女性の大変さの一端は伺い知ることができた気がする。  これからはもっと、特に生理中の女性に優しくなれそうな気がした。とはいえ、女性に対してこんな汚い話をするわけにもいかないだろうが……。 〈文 山野祐介〉
フリー編集・ライター、現役AI絵師。携帯電話やポイント、ネット犯罪、節約術やお金の最新情報などに精通し、月刊誌で連載中。Twitter:@yamanoyy
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