更新日:2020年09月03日 10:16
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狙われた国の予算4兆円。持続化給付金を貪る悪徳マルチ

「タダで未来に投資できる」悪魔のセールストークの中身

 ここまでは、マルチ商法の手口としてそう目新しいものではない。ところが、コロナ禍において勧誘の手口がガラリと変わった。きっかけは持続化給付金だ。 「勧誘を断る人の理由のほとんどが『お金がない』というもの。僕もそう言って断りました。ところが、勧誘する人間は『持続化給付金で100万円もらえるように段取ってあげるから、そこから出せばいい』と持ちかけてきた。前年に100万円以上の事業収入があったことにして、虚偽の確定申告をするようなんです。そして、今年の3月以降に事業収入がゼロの月をつくる。こうすることで、持続化給付金の満額である100万円を受け取れるんです。水商売の方や学生、シングルマザーなど、確定申告をしていなそうな人間に重点的に声をかけているようでした」  ただ、給付された100万円のほとんどが吸い上げられることになる。金額の行き先について、田口さんが説明する。 「給付されたらまず、手数料で50万円を勧誘者に支払う。さらに、一口8万円の会員権を5口購入するように説得されます。ただ、それも勧誘者にかかると、『ポンと湧いてきたお金で未来の不労所得がもらえるんだから、こんなにおいしい話はないよ』というセールストークになる。実際、手元に数万円は残りますからね」 持続化給付金を貪る悪徳マルチ ただ、冒頭で触れたように持続化給付金をめぐっては不正受給による逮捕者が相次いでおり、申請に虚偽があった場合、刑事罰に問われるのは当然の道理だ。制度の要件をきちんと満たす者ならまだしも、そうでない場合が含まれていないとも限らない。

今は無法状態だが、取り締まりが強化されるのも時間の問題

 週刊SPA!は、Lの代表を務める男性に取材を申し込んだ。すると彼は、 「過去に問題行動を起こし、退会処分となった元会員の一部が我々の評判を貶めようとデマを流していることは把握しています。しかし、我々がそのような不正に加担している事実は一切ない」 と話し、疑惑を否定したのだった。ちなみにネット上にはLの公式ホームページが堂々と公開されており、自社サービスの魅力について謳っている。 「L社としてはサービスを提供しているだけで、それを会員がどう売るかまでは把握していない可能性はあります。ただし、無知な人々に持続化給付金の不正受給をそそのかして搾取する悪徳商法が現在横行していることは、紛れもない事実。今後、持続化給付金の予算はさらに上積みされ、5兆円に達する見通しですが、出どころは我々の血税です。今は無法状態ですが、早晩取り締まりは強化されるでしょう」(奥窪氏)  持続化給付金バブルに沸くグレーゾーン業界だが、捜査当局も指をくわえて見過ごすはずはない。甘い言葉で勧誘を受けても、一線を越えては絶対にいけない。
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マルチ商法の温床に!?コロナ禍で激変するシェアオフィス事情
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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