更新日:2020年09月04日 15:59
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ペーパー8社で1600万円を不正受給「持続化給付金200万円」に群がる悪党たち

―[新型コロナ詐欺]―

持続化給付金の不正受給が相次ぐ

 新型コロナの影響を受けた人たちを支援するため、中小企業には最大200万円、個人事業者やフリーランスには最大100万円を給付する「持続化給付金」。この持続化給付金をめぐり、嘘の売上台帳を提出して給付金を騙し取ったとして、8月26日に名古屋市の男性3人が逮捕された。3人は、およそ400人に代わって嘘の申請を行い、4億円を騙し取った疑いがあるという。 「昨今、この持続化給付金を狙った不正受給や詐取が横行していて、逮捕者が相次いでいます」と話すのは、新型コロナ関連詐欺などに詳しいフリーライターの奥窪優木氏だ。奥窪氏の最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(発売中)では、新型コロナに関連した給付金や補助金を不正受給する連中を取材し、その巧妙な手口に迫っている。
新型コロナ詐欺

新型コロナ経済対策200兆円を喰い物にする連中の巧妙な手口に迫った『ルポ 新型コロナ詐欺』(9月2日発売)。持続化給付金の不正受給、偽造された税務署の収受印、ペーパーカンパニーを使った詐取、コロナ禍に乗じた悪徳商法、窮地の飲食店に不正受給をそそのかす悪質業者、マスク価格高騰の裏で暗躍していた国際犯罪組織……新型コロナ対策200兆円に巣食う正体とは?

ペーパーカンパニーを使って持続化給付金を詐取

 コロナ禍の直撃を受け、明日への不安を抱えていたところに悪知恵を吹き込まれ、背に腹は代えられない思いで不正受給に手を染めてしまった者もいることだろう。しかし、まったく新型コロナの影響を受けていないにもかかわらず、持続化給付金を詐取する人間もいる。中内宏昌(仮名・49歳)もコロナショックとは無縁なのに、限度額200万円を大きく上回る金額を受給したという。 「過去にやっていた事業のためにつくったペーパーカンパニーが2社あったんだよ。でもここ数年はまったく使っていなくて、5年前に休眠届を出していた。廃業の手続きをするのが面倒くさくて放置していたんだけど、まさかこんなに儲かる日が来るとはね……」  中内氏はかつて海外資産フライトを仲介していたが頓挫してしまい、被害者の会がつくられるなど、以前から胡散臭い人物だった。中内氏の不正受給のカラクリはこうだ。 「前年度の帳簿上、2社間で互いに200万円の支払いをしたことにすれば、それぞれ200万円の売上と経費ができる。これで修正申告を出したんだけど、支払いと売上が同額で利益はゼロになるので法人税はかからない。本来の申告期限を過ぎていたけど、新型コロナの特例で、何も言われなかったよ。同時に、個人事業主としての確定申告もした。そっちは実際に400万円ほど売上があったので、ありのままに申告したよ」  こうして、ペーパーカンパニー2社と個人事業主で、合計3件の確定申告を済ませ、持続化給付金を申請したのだ。 「3件合わせて満額500万円分、無事にすべて受け取ったよ。税務署行ったり書類作ったりで手間はかかるけど、こんな割のいい仕事はなかなかないよね。ゴチ!」  その口ぶりからは、罪悪感も不正が露見することへの危機感も、まったく感じられなかった。
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税務署の収受印を偽造する者も
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた

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